小学生作家がオードリー・タンに聞いた「トランスジェンダーと多様性」


うい:私のような子供たちがもっとトランスジェンダーについて知った方が良いですか?

オードリー:「男の子だから男らしくするとか、女の子だから女の子らしくする」というステレオタイプの権化を乗り越えるためにも、年齢にかかわらずもっと皆が知るべきことだと思っています。

うい:特にどんなことを子供たちに伝えていくと良いでしょうか?

オードリー:「生物学的な特徴が必ずしも自分たちの運命を決めるわけではない」ということを伝えることができれば良いですね。

うい:もっと色々な人たちがトランスジェンダーに関心を持ち、正しい知識を持つことができれば、トランスジェンダーの人たちも皆幸せになれると思いますが、どのようにしたらそのような状況を作れるのでしょう?

皆がトランスジェンダーになる社会へ


オードリー:皆が少しずつトランスジェンダーになることが大切だと思っています。たとえば、台湾では「1922」という組織を作っていた男の子がいて、学校では男子全員が青いマスクをしていたのに、彼はたまたまピンクのマスクしか持っていなくて、ピンクのマスクをつけることをすんなりと受け入れてもらえなかったんです。

ところがある日、医療従事者を含めて、大臣を含める厚生省機関の人たちが全員ピンクのマスクをつけてきた。おまけに、大臣は、「小さい頃にピンクパンサーが好きだったので、ピンクのマスクがとても気に入っている」と語ってくれて、そうこうしているうちに、政府機関の人たちは皆自分が好きな色のマスクを身に着け始め、世の中の様子が少しずつ変わってきたんです。

これをジェンダーメインストリームと呼んでいるのですが、このように自然な形でトランスジェンダーが皆に理解され、ダイバーシティを受け入れることで世の中がトランスジェンダー化していけば良いのではないかと思っています。

うい:トランスジェンダーの人にとって、性別とはどんな存在ですか?

オードリー:トランスジェンダーにとっての性別(ジェンダー)とは、虹の色のようなもので、自分の中にある色々な経験を表現するということだと思います。



うい:男性はごく普通に社会的に成功している人が多いですが、女性にはそういう人たちが少ないので、オードリーさんのような存在は皆に明るい希望を与えているのではないかと思います。では、オードリーさんが目指しているコロナ後の世界について少しお話ししていただけますか?

オードリー:台湾は既にポストコロナの時代入っていると思います。もちろん、ポストコロナの時代でも、まだ完全に自由になっているわけではありませんが、私たちの社会には今、明らかに二つの大きな変化が起きていると思います。

一つはインターナショナルコネクションがオンライン化して、トランスカルチャー時代に入ってきていること。二つ目は、たとえば気候変動や男女平等など、現在世界中で起きている様々な問題をいろいろな国の人たちが協力し、世界が一体となって解決しようとする新しい世代が生れてきているということ。どちらもコロナパンデミックから生まれた素晴らしい進化だと思っています。
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文=賀陽輝代 構成・編集=谷本有香

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