政策立案者たちは、世界経済を立て直す政策や景気刺激策を策定することにおいて、気候への投資が長期的に及ぼす影響を考慮に入れることで、より持続可能でレジリエントな、より良い経済を再構築するまたとない機会を得ています。
新型コロナウイルス感染拡大が私たちに与えた教訓は、人類の幸せに破壊的かつ不可逆的な影響をもたらす世界的な緊急事態が再び起こることを避けるためには、持続可能な未来を形成するレジリエントで将来を見据えた戦略が必要であることを教えています。
海運のグリーン化で実現できること
国際海運は重要なインフラのひとつであるにもかかわらず、経済的支援を求めることを躊躇してきました。世界の貿易がこれまでにないほどの落ち込みにあえぐなかで、海運の脱炭素化の未来に一方的に投資し続けることは不可能です。
政府には、コスト削減とゼロカーボン船の技術開発促進に必要な大規模実証プロジェクトの奨励において、重要な役割を果たす力とその責任があります。国産船のゼロカーボン船への置き換えのための支援は、国内の排出量を削減すること、そして新型コロナウイルス大流行の収束後、需要が回復し始めた時に、将来のゼロエミッション外航船の需要に備え造船所を整備することを通じ、持続可能な雇用創出を実現するひとつの方法となるでしょう。
リーダーたちは、エネルギー移行委員会およびUMASによる、「Getting to Zero Coalition (海事産業の脱炭素化を促進するための国際企業連合)」のための研究からもインスピレーションを得ることができるでしょう。この研究では、業界の温室効果ガス排出量を2050年までに半減させるのに必要なゼロカーボンエネルギー源への根本的なシフトを行うために、海運に必要とされているインフラへの投資累計に注目しています。
脱炭素化目標を達成するため、そして、2050年までに海運を完全に脱炭素化するために求められる投資累計(イメージ: UMAS/Energy Transitions Commission/Getting to Zero Coalition)
製造方法にもよりますが、2030年~2050年の間に国際海運における排出量を半減するために必要なインフラ投資は、約1~1.4兆ドル、20年間で考えれば年間平均500~700億ドルにのぼります。これは、2018年の世界のエネルギーへの投資額(1.85兆円)の2.7%~3.7%に相当し、海運の燃料使用量から見ても妥当な額です。
この研究では、海運の脱炭素化の大部分は、陸上で行われることになるということも明らかになっています。投資の大部分は陸上ベースのインフラおよび低炭素燃料の生産施設に回ることになり、その割合は全体の約87%を占めます。船舶自体に関連するものは、必要な投資の13%にすぎません。
さらに、海運のグリーン化を後押しする陸上インフラを対象とした公共投資は、海運業界以外にもプラスの効果をもたらすはずです。
海運の脱炭素化は、世界のエネルギー転換を実現することができるだけの規模を持っています。ゼロカーボンエネルギー技術のコストが下がれば、代替燃料の競争が激化します。