海運にも「脱炭素化」の波 投資すべき意外な理由

国際海運の脱炭素化が求められている(Photo by Unsplash)


マッキンゼーが算出したところによれば、風力、太陽、水からの再生可能電力を低炭素燃料に変換するための高価な電解装置の価格も、世界の船舶のわずか2.5%がこの新しい「電気燃料」に移行するだけで1/6に減少するとされています。

海運における燃料使用量は、年間2億5000~3億トンと推定されています。これは世界の石油需要量の約4%です。つまり、海運には、未来を担う燃料の供給業者に安心感を与え、より広範なエネルギー転換のための低炭素燃料の展開にスケールをもたらす触媒となり、さまざまな産業やCO2低減が困難な分野(hard-to-abate産業)においても、その市場を切り開くことができる可能性があります。

海運の脱炭素化を実行するにあたって、どの国も取り残してはなりません。陸上ベースのエネルギーインフラへの投資もかなりの開発利益をもたらす見込みがあり、海運が低炭素燃料にとって信頼できる需要源となれば、未開発の再生可能資源が豊富にある発展途上国や中所得国におけるエネルギープロジェクトへの投資を促進できる可能性もあります。

欧州防衛基金の研究では、サハラ砂漠の1%未満に相当する面積のソーラーパネルだけでも、国際海運を担う全船舶に必要な量の低炭素燃料を十分生成できるとされています。

人びとが求めていることは何でしょうか。砂の上に社会を築いてしまったことへの気付きから、より強固な基盤の上に私たちの社会を再構築したいと望んでいます。政府はいま、岐路に立っており、現在の危機からより良い形で復興を遂げ、世界をより持続可能な方向へと舵取りすることで、大転換を図る歴史的な機会を手にしているのです。

「Getting to Zero Coalition」が掲げる、生産、流通、貯蔵、補給を含むスケーラブルなゼロカーボンエネルギー源を確保するために必要なインフラの支えのもと、2030年までに、外航貿易ルートに商業的に実現可能なZEV(ゼロエミッション車)を運行させるという野心的目標も、このビジョンを断固として支持しています。

2008年の金融危機における最大の過ちは、政府や企業の多くがその機会を良い復興のための大転換として活用せず、以前と同じ方法で再構築を行ってしまったことです。同じ過ちは犯したくありません。だからこそいま、海運分野での大転換が必要なのです。

「Getting to Zero Coalition」は14カ国の政府によって支持されています。私たちは、貿易と発展途上国への技術的および経済的影響を考慮しながら、海運のグリーン転換を加速化させる方法について、多くの国々が議論に加わることを望んでいます。


この記事は、世界経済フォーラムのAgendaからの転載です。
(上記AgendaはTradeWindsに掲載された記事の和訳を転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Johannah Christensen, Managing Director, Global Maritime Forum; Anthony Robert Hobley, Executive Director, Mission Possible, World Economic Forum

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