急増するアジア系へのヘイトクライム 米で「Invisible Minority」であるということ

ニューヨークの実業家・政治活動家のアンドリュー・ヤン氏は台湾からの移民二世だ(Getty Images)


「アジア文化圏の人々は、自分の身に起こったことを警察などの機関に報告したがらない傾向があると言われる。さらに問題に巻き込まれるかもしれないという恐れや、声をあげたところで何も変わらないという考えをもつ人も多いからだと考えられる。

全てのアジア系の人々がそうだとは言いたくないが、歴史的にアジア系アメリカ人はアフリカ系やラテン系などの人々と比較すると声をあげない傾向があったことも、これまでアジア系へのヘイトクライムが注目を集めるに至らなかった要因だと考えることができる」

ではアジア系の人々は、アメリカ社会ではどのような立ち位置だと認識されているのだろうか。

「見えない、模範的な」マイノリティー


アメリカにおいてアジア系は「Invisible Minority(見えないマイノリティー)」と呼ばれる。アフリカ系やラテン系の人々ほど目立った行動を取らずおとなしいとされるため、注目の対象となりづらいからだ。

また、優等生で勤勉、アメリカ社会でも稼ぐことができるというイメージから、アジア系につけられる一般的なステレオタイプは「Model Minority(模範的マイノリティー)」だと言われる。

例えばアメリカ人作家ジョン・ルーサー・ロングの原作をもとに、オペラ化もされた「蝶々夫人」では、蝶々夫人はアメリカ人士官ピンカートンに一途な愛を捧げる、従順で聞き分けの良いアジア系女性のステレオタイプを反映していることがわかる。

もう一つアジア系女性のステレオタイプとして挙げられるのは、アジア系の女性は白人や黒人の女性と比べて「性的な対象」と関連づけられて見られることだ。

アトランタの事件は3軒のマッサージ店で起こった。容疑者は人種的な動機からではなく、自身が抱えるセックス依存症がもととなり犯行に及んだ可能性があるとの見方も示されているが、チャン教授はこう語る。

「事件の動機は人種差別的な感情からではない、としているが、もしその主張が本当だったとしても、アジア系の女性が性的なイメージと関連づけられて考えられてきたという意味において、人種差別的な動機によるものだということができる」。つまり、容疑者が連続的にアジア系のマッサージ店を襲撃したとすると「性的なサービスを提供する場と考え、アジア系女性たちを狙った」と考えられる。

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銃撃の現場のひとつとなった店(Getty Images)
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文=河村優

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