リーダーシップに関する著作を持つティム・ルプファーは「新型コロナウイルスから得られた重要な教訓は、リーダーとエキスパートは異なるものということだ」と語る。
そのルプファー自身も、経験豊かなリーダーだ。彼は湾岸戦争の「砂漠の嵐作戦」に参加した元軍人で、米国陸軍士官学校の教員、企業幹部、上級コンサルタントといった顔を持ち、ローズ奨学生でもある。
ルプファーによれば、リーダーシップに関する大きな誤解として、リーダーは万能だという考えがある。彼いわく、リーダーとは、組織の目標を達成するために人々に影響を与える人のこと。そのためのスキルや意志は誰もが持ち合わせているとは限らない。
「現代では多くの人が、特定のタスクや知識に焦点を置くスペシャリストとして、仕事の多くを行っている」とルプファー。「特定の領域をマスターした時、エキスパートになったと言える」
コロナ流行により、リーダーとエキスパートとの違いが非常に鮮明となったとルプファーは指摘する。エキスパートは、特定の問題(その人の専門分野)に関する最も正確なアセスメントを提供する。一方、リーダーにはさらに幅広い役割があり、そうした情報を私たちが暮らす複雑な状況に応用しなければいけない。
「エキスパートはスペシャリスト(「ウイルスはこうして広がります」と説明する人)だ。一方でリーダーはゼネラリスト(「制限しなければいけないのはこれで、続けなければいけないのはこれだ」と決める人)でなければいけない」とルプファーは言う。
ルプファーによると、リーダーとエキスパートは同時になれないものではないが、両者に必要とされるスキルと気質には違いがある。エキスパートは自分の取り組みに集中する一方で、リーダーは常にさまざまな要求のバランスを保つことに気を配る。
コロナの流行中、私たちはエキスパートに「この新しい証拠からは、何が分かりますか?」と聞いた。一方で、大小さまざまな立場のリーダーが問われたのは、「経済や社会からの要求と公衆衛生とのバランスをいかに取るべきか」という問題だ。