香港に上場するテンセントの株価は、1月の最高値から20%以上も下落し、2000億ドル(約21.8兆円)以上の時価総額が失われた。同社が3月24日に発表した2020年10〜12月期の決算は市場予想を上回る内容だったが、株価は3%下落した。
中国政府は昨年、アリババ傘下のアント・グループの350億ドル規模のIPOを中止に追い込み、デジタル決済やオンライン融資に関連する新しいルールを策定しようとしている。さらに、独占的な行為を取り締まることで、公正な競争を促進したいと考えている。
テンセント会長のポニー・マーは最近、規制当局の担当者と面会したことを認め、同社社長のマーティン・ラウも24日の電話会談で、コンプライアンスの重要性を強調した。
「我々は常に規則や規制を完全に遵守することを強調してきた。政府が何を懸念しているのか、社会が何を懸念しているのかをさらに理解し、コンプライアンスを徹底することが重要だ」とラウは話した。
上海金融高等研究所の朱寧は「フィンテックに関して言えば、テンセントはアントグループよりも規制環境の強化による影響が少ないだろう」と述べる。これは、同社のオンライン融資事業の規模とレバレッジ比率がアントを上回っているためで、テンセントは政府の規制に対処するための改革の必要性が低いという。
しかし、同社のデジタル決済部門は、かなりの不確定要素を抱えている。中国の中央銀行である中国人民銀行は1月にオンライン決済の市場集中を抑制する方針を発表した。そこには、反トラスト当局が決済市場で3分の1以上のシェアを持つ事業者らを定期的に召集し、警告を行うという案が盛り込まれていた。
「当局は、決済分野の規制の詳細をまだ調整中であり、これはテンセントにとって大きな不安要素と言える」とアナリストは述べている。
WeChatを競合のアリババに開放
一方で、反トラスト当局は、テンセントがWeChatプラットフォームを競合他社に開放することを望んでいる。同社のライバルであるアリババは、10億人以上のユーザーを抱えるWeChat上に、マーケットプレイス「Taobao Deals」を立ち上げると報じられている。両社はこれまで、互いのサービスを自社サイトから排除し合ってきた。
深センの調査会社Blue Lotus Capital Advisorsの担当者は、アリババの受け入れは、テンセントにとっての最初の譲歩になると述べた。テンセントはさらにWeChatを、バイトダンスが運営する短編動画アプリ「Douyin」に開放する可能性があるという。
バイトダンスは今年2月、テンセントがWeChat上でDouyinのコンテンツをブロックすることで独占禁止法に違反していると提訴していた。テンセントの広報担当者は、この告発は根拠がなく、中傷的だと述べていた。
「もしも、Wechat上でDouyinの動画コンテンツの利用が可能になれば、テンセントが運営する動画サービスの利用時間は減ることになるだろう」とアナリストは述べている。
しかし、今のところテンセントの中核事業であるゲーム事業への影響は避けられそうだ。オンラインゲームに関する政府の懸念は主に、未成年者の保護にあるが、「テンセントはすでに適切な手を打っている」という。