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2021.04.02

未来社会の秩序のために スマートシティ構想はテクノロジーガバナンスが鍵となる

「世界経済フォーラム(以下、WEF)」が、G20と連携して主導しているスマートシティプロジェクト「G20 グローバル・スマートシティズ・アライアンス(G20 Global Smart Cities Alliance:以下、GSCA)」。WEFと20年来の戦略パートナーシップを組むデロイトも、GSCAに参画し、世界をつなぐスマートシティ実現に向けたWEFの取り組みを共に推進している。GSCAの最前線で活躍する2人の日本人、スマートシティプロジェクトスペシャリストの平山雄太と、デロイト トーマツからWEFに出向して同プロジェクトのフェローとして活躍している黒石秀一にプロジェクトの現状と課題を聞いた。


世界各都市がベストプラクティスを学び合うスマートシティのアライアンスをつくる


世界中で都市化が進むなか、各都市はスマートシティ化をそれぞれ進めている。しかし、プライバシーやセキュリティなど、多くの課題は世界共通なのに、各都市がバラバラに取り組む意味はあるのだろうか?スマートシティの実現に不可欠なテクノロジーの責任ある実装と効果的な管理・運用を進めるには、世界各都市がベストプラクティスを学び合えるアライアンスが必要ではないか?

日本が議長国を務めた2019年のG20。スマートシティがはじめてG20のアジェンダとなったその会議で、こうした問いかけがなされたことがきっかけとなり、スマートシティ・テクノロジーのネットワーク組織、GSCAが誕生した。世界経済フォーラム第四次産業革命センターは、グローバルな都市連合の連携の中心となって、GSCAの活動をリードしている。

デロイト トーマツから出向し、世界経済フォーラム第四次産業革命センターのスマートシティプロジェクトフェローとして活動する黒石秀一(以下、黒石)が語る。

「旗を立てたのは日本。そこでスマートシティに関する具体的な政策を、日本の都市も参画しながら世界中の都市とともに、つくり上げようということになったのです」


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター スマートシティプロジェクトフェロー 黒石秀一

同じく世界経済フォーラム第四次産業革命センターのスマートシティプロジェクトスペシャリストの平山雄太(以下、平山)は、この取り組みが日本発となった要因のひとつとして、日本の世界におけるポジションを挙げる。

「プライバシーやセキュリティなどテクノロジーを実装する際に必要となるガバナンス強化の必要性は世界の共通認識です。データ利活用の文脈で言えば、例えばアメリカはGAFAと呼ばれる巨大企業群がデータを独占しているといった批判を招いており、中国は政府主導のプロジェクトが多くありますが、必ずしも透明性が高いとは言えません。ヨーロッパではGDPR(EU一般データ保護規則)という個人情報保護の法律でデータ利活用に厳しい制約を課すなど、スマートシティやデータ利活用に関する議論が、世界中の至るところで起こっているタイミングで、日本はG20の議長国を務めるというポジションにいたのです」

平山は、昨今のコロナ禍によって、スマートシティの実現や都市のデジタルトランスフォーメーションの必要性がこれまで以上に叫ばれるなか、GSCAが果たすべき固有の役割に対する期待は確実に高まっていると言う。

「パンデミックの影響により、教育格差、経済格差などの課題が一気に顕在化し、社会全体で自分ごととして議論されるようになりました。日本でも、遠隔教育がすぐに始まらないといった声や、給付金がすぐに受け取れないといった具体的な課題を、多くの国民が体験しています。これらの課題を解決する手段として、スマートシティ化があらためて注目を集めています。昨今、グローバルの事例と比較して、なぜ日本ではスマートシティが実現できないのかと多くの声が上がり始めています。これに呼応するように、コロナ禍でそれどころではないはずなのに、GSCAに参画を希望する都市や企業が次々と増えています」

なぜGSCAに参画を希望する都市が増えているのか


GSCAは、日本国内において自治体同士の連携を図るコミュニティ活動を主催しており、現在12の自治体が参加、スマートシティ化の中核となる現場の職員が中心となって定期的な意見交換を行い、すでにベストプラクティスを取り入れる事例も出てきているという。 GSCAは、現場をリードする職員たちが自治体の枠を超えて本音で意見交換できるコミュニティとしても機能しているのだ。

平山がこのコミュニティ活動の意義について説明する。

「GSCAの目的は各都市にエンパワメントすることです。首長のリーダーシップがどんなに強くても、テクノロジー実装を地域に強制することはできません。最終的に市民の意見を聞きながら、条例を策定し、社会実装に結び付けていくのは自治体にいる現場の職員です。しかしながら現場の職員がセキュリティやプライバシーなどについてすべてのことを勉強するのは困難です。だからこそ私たちが国内外のベストプラクティスを現場の職員同士が共有するコミュニティを提供することで、各都市をサポートすることが可能になるのです」

黒石が、都市のエンパワメントの事例として挙げるのが前橋市だ。

「スーパーシティ構想実現に向けて、デロイト トーマツもサポートして事務局を立ち上げた群馬県前橋市の例を挙げると、世界のどの都市にも共通する重要なポイントが浮かび上がります。市長の強いリーダーシップに目が行きがちですが、施策実現を可能にしている、現場で動く中堅職員に着目すべきでしょう」


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター スマートシティプロジェクトスペシャリスト 平山雄太

各都市を「connected」することで実現する全体最適


テクノロジーを活用したデジタルサービスに境界線はない。しかしながら自治体単位で実装されるサービスは、何もしなければ多くのサイロを生み出し、結果的に市民にとって使い勝手の悪い仕組みになる可能性があると平山は言う。

「例えば見守りサービス。都市によってシステムが異なっていれば、人が市境を超えた時点で、それ以上は見守れなくなってしまいます。都市がconnectedして(≒つながって)いくために、仕様やポリシーを揃えていくことは、極めて重要なのです。また、これはコスト面でも同様です。もし、各自治体が個別にシステム開発を行えば、当然コストは大きくなり、小規模の都市にとっては導入が困難になるでしょう。しかし自治体の規模にかかわらずスマートシティは実装されるべきです。私たちは体系的なノウハウを持っていますし、官でも民でもない中立的な立場で各都市やステークホルダーをつなぎ、個別最適ではなく全体最適となる道筋をつけることは、GSCAの非常に重要な役割だと考えています」

さらに法規制もクリアしなければ、テクノロジーの利便性に対する住民の期待に応えることはできないと、黒石は例を挙げる。

「ある都市においては箱型の自動運転車を活用し、医師が移動巡回することで医療を地域内の各所で手軽に提供する仕組みを構築しようとしています。しかし現状ではできません。法的に一定以上の広さの待合室、診察室がないと医療行為ができないという規制があるからです」

自動運転を可能にする技術がすでにあるのに、規制が技術の進化に追いついていないために、明らかに誰もが望む“スマート”で便利な社会を実現することができないのだ。テクノロジーの恩恵を最大化し都市の利便性を突き詰めるためには、規制(ポリシー)のあり様も含めた総合的な観点でのガバナンス構築が必要となってくる。

しかも、こうした法規制や各種のポリシー・仕様を整備する上においては、各都市ばらばらでやるのではなく、スマートシティ化を目指す世界中の各都市で足並みをそろえて推進することが重要なのだ。

22か国36都市のパイロット都市が取り組む「5つのモデルポリシー」の実装


そこで、GSCAが2020年11月に発表したのが、Pioneer Cities Programとしてパイロット都市が取り組む新たなプロジェクトだ。スマートシティ推進の基礎となるグローバル共通の「5つのモデルポリシー」をパッケージで提供し、パイロット都市はそれらの実装を目指す。

世界中がパンデミックで混乱する最中に、22か国36もの都市(日本からは、加賀市、加古川市、浜松市、前橋市の4都市)がパイロット都市として参画し、GSCAが提唱する「5つのモデルポリシー」の実装へのコミットを宣言した基本合意書にサインを行った。

平山はPioneer Cities Programについてこう語る。

「モデルポリシーの発表と22か国36都市ものパイロット都市の参画は、GSCAの設立から1年経過しての最大の成果でした。

これからの1年は、スマートシティ化を進めるにあたり、モデルポリシーの政策への導入など、テクノロジーの責任ある設計と実装、いわゆる『テクノロジーガバナンス』が、パイロット都市となった各都市にきちんと定着し、実現されつつあることを検証していく段階になります」

テクノロジーが、市民一人ひとりの豊かな生活の実現に寄与する形で社会的に実装されるためには、まだまだ超えなければならない壁がある。特に、データを公開してさまざまなビジネスで活用していくためのオープンデータのあり方や、新テクノロジー導入時のプライバシーやセキュリティへの対処法などは大きな課題だ。

こうした課題に対応するために、平山が日本の都市への導入をサポートしているのが「モデルポリシー」のひとつである「プライバシーインパクトアセスメント(PIA)」である。

「プライバシーインパクトアセスメントは、グローバルでは一般的になりつつありますが、日本ではまだ聞きなれない言葉だと思います。かつて公害対策として環境アセスメントを事前に行うことが一般的になったのと同じように、プライバシーへの人々の関心が高まっているなか、新たなサービスを都市が導入する前に、その影響調査を行い、リスクを最小化していく取り組みは今後一般化していくでしょう」

モデルポリシーのパイロット都市への実装が進んでいるか検証作業を行っているのが黒石だ。

「検証結果は、2021年4月に開催されるWEFの国際会議「グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(Global Technology Governance Summit)」はもちろん、他の国際会合でも、その結果が共有される予定です」

「グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット」とは、「テクノロジーの活用と統御」をテーマとした大型国際サミットで、4月6-7日に日本国ホストで初開催される。GSCAが主体となって取り組む、テクノロジーの責任ある設計と実装がグローバルで議論され、その内容がGSCA設立の地、日本から国際社会へ発信されることとなる。

最後に平山・黒石の両氏にスマートシティ実現への想いを聞いた。

「スマートシティの実現は、都市が持続可能な環境をつくっていくことそのものです。この先どんなテクノロジーやサービスが出てくるかわかりませんが、個別バラバラではなく、総合的な知見を与えられる存在となってサポートしていきたいと思っています」(平山)

「必ずしも機械に強くない方からの“それって大丈夫なの?”という不安にきちんと答えられる存在でありたいですね。現在も未来も人財と信頼が重要なことは変わりませんし、パブリックトラストはスマートシティの基本です。

デロイト トーマツは、日本最大級のプロフェッショナルサービスファームとして専門性を生かしながら、GSCA、そして全世界の地域社会とともに、パブリック・トラストを基本に据えたスマートシティの実現に貢献したいと強く思っています」(黒石)






<コラム>スマートシティに有効なパブリック・トラストは日本から発信する


WEFがポストコロナの世界へ向けて提唱する「グレート・リセット」イニシアチブとは、パンデミックで失われた社会機能を回復するために、第四次産業革命(4IR)技術をベースに、持続可能な形に社会を再編する試みである。デロイト トーマツ コンサルティング パートナーでありWEFフェローの邉見伸弘は、そのイニシアチブが生まれた背景にコロナ禍の影響を指摘する。

「ビジョナリーな提言が多かったWEFが、パンデミックに直面することで、地域のイシューを拾わざるを得ない状況となったのです。経済格差を筆頭に、雇用、地域社会、男女人種問題、ダイバーシティー&インクルージョンなど、既存の問題が、喫緊の課題となって次々と押し寄せてきたのですから。

解決のために必要なのは、既存のフリードマン・ドクトリン(富の集中を生む株主資本主義)からの脱却。社会全体の幸福を考えるステークホルダー資本主義へ移行すべきという意思表示だとWEFは考えました。

しかしこのステークホルダー資本主義、実はWEF創設者の経済学者クラウス・シュワブが50年前の創設時に唱えていたことであり、もともとWEFはその実現のために設立されたものなのです」

この議題は今年1月にWEFが開催したオンライン会合(ダボス・アジェンダ)でも取り上げられた。邉見はWEFと協働して、同会合に対する日本の財界リーダーの意見を「日本の視点:『実践知』を活かす新たな成長モデルの構築に向けて」というレポートにまとめ上げた。

スマートシティの加速には「テクノロジーガバナンス」が欠かせない。それを加速するのもまたステークホルダー資本主義への移行である。そしてその鍵とされているのが、パブリック・トラスト(社会的信用)だ。

関わるすべての人々を幸せにするステークホルダー資本主義。企業はすべての人々から社会的信用を得ることではじめて、自社利益を追求できる。この考え方は、日本では売り手・買い手・社会の「三方よし」として、近代日本の商習慣/文化として存在していたものだった。

「日本人はかつて、売り手、買い手、社会の“三方よし”を商売の基本としていました。商人は売買とともに、地域などへの社会貢献が必須という意識があったのです。つまり昨今世界で注目を集めているSDGs、ESG投資などは、古来日本に存在していた考え方だったと言えます。そしてそれこそWEFの目指すステークホルダー資本主義そのものだったのです」

もともとパブリック・トラスト(社会的信用)が生まれやすい環境に日本はあったのだと邉見は言う。そして、その思想はいま、世界から注目されている。ワシントンDCで政策研究経験のあるデロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント/WEFフェローの南大祐はこう指摘する。

「こうした独自の考え方をもつ日本は、いまこそ世界に向かって、はっきりした声を上げるときなのです。自国がリードできるアジェンダをつくり、強みを生かしたルールシェイプを行う。そのうえで、産業界とともに新たなエコシステムをつくる。そうしたループを繰り返していくことで、国際社会での日本の存在感は高まり、貴重な情報を集め、世界をリードしていくことができるようになるのです」



平山雄太(ひらやま・ゆうた)◎世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター スマートシティプロジェクトスペシャリスト。福岡地域戦略推進協議会にてスタートアップ支援やスマートシティプロジェクトを担当。現在はG20 Global Smart Cities Allianceを担当している。 2018年4月より名古屋大学客員准教授。

黒石秀一(くろいし・しゅういち)◎世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター スマートシティプロジェクトフェロー。長野県出身。デロイト トーマツ コンサルティング入社後、企業の海外事業企画やFC今治スタジアム案件等を担当。G20 Global Smart Cities Allianceにも参画している。ワシントン大学大学院修了。

邉見伸弘(へんみ・のぶひろ)◎執行役員パートナー・チーフストラテジスト。ハーバード大学国際問題研究所研究員やWEFフェロー等を歴任。Deloitte Global Economist Councilメンバー。JBIC(国際協力銀行)、米国戦略ファームを経てデロイト トーマツ コンサルティングに参画。

南 大祐(みなみ・だいすけ)◎デロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント。WEFのフェローとして、日本リージョナルアクショングループの活動を支援。地政学的リスク分析、経済動向調査、サイバーセキュリティ戦略立案案件等を担当。

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