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2021.03.27 17:00

社内にアートを飾るのはなぜ? マネックスグループの狙い


そんな松本さんの話を聞いて、ふとワインのことを思い出した。これは僕の持論だが、ワインの品種の違いがわかるようになるのは、花粉症を自覚するのと同じだと思う。

真剣に1杯1杯飲み続けていれば、ある日突然、味の違いが鮮明にわかる瞬間が訪れるのだ。結局は、自分の中に蓄積されたものが、ある日突然目を覚ます。全ては、何かに触れ続けることから始まるのだ。

情報が大きな価値を持ついまの時代、ますます選択の重要性が増してくる。周りに流されず、自分のなかで判断基準を持つ。その感覚を養えることが、近年、アートとビジネスの掛け合わせが注目されている理由のひとつにあるだろう。

アートが盛んなニューヨークやパリが多くの人を惹きつけるのは、そこに多様性を受け入れる土壌があるからだ。僕が知る限り、信号待ちをしているだけでもワクワクさせてくれる街は、その2つ以外にない。アートの裾野が広いということは、人間が生きやすい、豊かな社会であることの象徴なのかもしれない。


ART IN THE OFFICE 2020 受賞アーティストによる社員へのワークショップの様子

毎年、100人ほどの応募があるというAIO。だが、GALAXYに作品をつくることができるのは毎回1人しかいない。松本さんと塩見さんは、選考に漏れたアーティストのワークショッププランを集めて、アートについて学べる場をもっと豊かにしたいという計画も考えているそうだ。

2021年の受賞アーティストは6月上旬に決定し、8月にはまた新たな作品の展示が始まる予定だ。果たして、今年はどんな作品が登場するのか、いまから楽しみでならない。


松本 大(まつもと・おおき)◎1963年埼玉県生まれ。1987年東京大学法学部卒業。ソロモン・ブラザーズを経て、1990年ゴールドマン・サックス入社、30歳で当時同社最年少のジェネラル・パートナーに就任。1999年ソニーとの共同出資でオンライン専業の証券会社であるマネックス(現マネックス証券)を設立。現在、マネックスグループ取締役会長兼代表執行役社長 CEO、米マスターカード社外取締役、Human Rights Watch国際理事会副会長を務める。

文=鍵和田昇

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