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2021.03.27 17:00

社内にアートを飾るのはなぜ? マネックスグループの狙い

マネックスグループ 代表執行役社長CEO松本 大氏、ART IN THE OFFICE 2020 宮内裕賀作品が展示されたマネックスプレスルーム“GALAXY” にて

マネックスグループ 代表執行役社長CEO松本 大氏、ART IN THE OFFICE 2020 宮内裕賀作品が展示されたマネックスプレスルーム“GALAXY” にて

東京・赤坂の高層ビルにあるマネックスグループおよびマネックス証券本社。エレベーターで上り、オートロックの扉を入ると、ガラス張りの円筒形の部屋が視界に飛び込んで来る。部屋に飾られた、大きなアートの存在に目が奪われるからだ。

円筒形のプレスルーム「GALAXY」に飾られたアート作品は、いまやマネックス本社のトレードマークともいえる、この会社が取り組む「AIO(ART IN THE OFFICE)」というプログラムの一環でつくられた作品なのだ。

AIOは、マネックスの創業者である松本大社長が、2008年にスタートさせたプロジェクトだ。GALAXYに相応しい平面作品の展示プランを毎年公募し、選ばれたアーティストの作品がここに飾られる。13回目となる2020年は、宮内裕賀さんの「イカリング」が選ばれた。

アーティストとのワークショップも開催


開成高校時代には写真部の部長を務めるなど、もともとアートに関心が高かったという松本さん。AIOを始めたのは、思わぬことがきっかけだったという。

「いまのオフィスに移転する前ですが、マネックスのオフィスを増床した際、会議室フロアをつくることになりました。そのなかの1部屋にも、円筒形のプレスルームがあったんです。そこは私がメディアの取材を受ける場所だったのですが、最初、その壁にグループ企業のロゴを順に並べようとしたんです。そうすれば、取材を受ける際、座る場所を変えると、その都度背景が変わって都合がいいと考えました。

でも、実は問題があって、円筒形で壁にアールがあるので、ロゴが歪んで見えてしまうんですね。それじゃこの部屋をどうしようか、もったいないなということで、ふと思いついたんです。ここはプレスルームですから、いろいろなメディアの人たちが来る。壁を白く塗ってギャラリー風にして、ここでコンテンポラリーアート(現代美術)を展開したら、大勢の人に観てもらえるのではと」

プロジェクトを立ち上げるにあたり、松本さんが相談したのが、現在AIOの運営協力をするNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]の塩見有子さんだった。

塩見さんが代表を務めるAITは、現代アートの理論や実践について学ぶ学校の開講や、企業におけるアート・プログラムのコンサルティング、海外のアーティストやキュレーターを日本に招聘するレジデンス・プログラムなどを行っているNPO法人だ。

そんな塩見さんと松本さんの出会いもまた、偶然のものだったという。

「いまから20年ほど前になるんですが、ちょうど東京のコンテンポラリーアートが盛り上がっている時がありました。食糧ビルディングという大正時代の建物が永代橋を渡ったあたり(江東区佐賀)にあって、そこにギャラリーが集まっていたんです。その中庭で行われた、コンテンポラリーアートの関係者が集まるガラナイト (フォーマルナイト)で出会ったのが最初だと思います。

でも、食糧ビルディングが取り壊されることになって、そのような人たちが集まる場所がなくなってしまう。この先、どうやったらコンテンポラリーアートをもっと広く知ってもらえるのか。大勢の人に認知されるにはどうしたらいいかということを、塩見さんと話していたんです」

当時のことを、塩見さんも次のように振り返る。

「出会った当初から、松本さんはアートに関心をもたれていました。それで、いろいろと相談を受けているなかで、『こういうアイデアがあるんだけど、どう思う?』と言われたのが、AIOでした」


NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト] 塩見有子 Photo by Yukiko Koshima
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文=鍵和田昇

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