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2021.04.02

南アフリカの自動車産業、政策整備で競争力強化へ


一方、トヨタは昨年、南アフリカでの新しい乗用車の製造事業に24億ランドの投資をすると発表。今年1月には、新たなコンパクトSUV車種であるカローラ・クロスを、ダーバンの工場にて生産開始するとの続報があった。モデルは、ガソリン車およびハイブリッド車の2タイプで展開予定。トヨタが南アフリカ国内で生産する初めてのハイブリッド車となる。

南アフリカにおけるハイブリッド車を含む電気自動車の普及は、欧州やアジアなどに比べてまだ限定的である。2010年から2019年の間に販売された電気自動車の台数は6043台で、新車販売台数の0.1%以下に留まっている。選択肢も限られており、2020年4月時点で35種類であった(グリーン経済に関するTIPS報告書参照)。

ちなみに、テスラのイーロン・マスクCEOは南アフリカ出身だが、テスラ車は未だ南アフリカ国内では展開していない。南アフリカ市場におけるパートナーのルビコン(Rubicon)は先月、テスラのSUV車であるモデルXパフォーマンスを国内でプロモーションすることを発表したが、これは同車の販売に先駆けたものではなく、展開予定の「パワー・ウォール」(家庭用蓄電池)の販促のためにすぎない。

2035年に向けた新たな政策目標


政府は2013年から「自動車生産開発プログラム(APDP)」による優遇措置を通じて、自動車産業の育成を図ってきた。そしてAPDPの失効を控えた昨年11月、ロブ・デービス貿易産業相は、2021年から2035年までの自動車産業政策「南ア自動車基本計画2035(SAAM)」を発表。12月、その具体的達成手段として「ポスト自動車生産開発プログラム(APDP2)」を2021年7月から施行することが伝えられた。

SAAMでは自動車産業のさらなる成長に向けた目標が明示されている。具体的には、2035年までに世界の自動車総生産台数の1%まで引き上げること、現地調達比率を60%に引き上げること、自動車産業関連の雇用を2倍にするなどといった項目だ。この目標の達成のために、APDP2では既存のAPDPを継承・修正したかたちで、自動車メーカーに税制などの優遇措置が与えられ、南アフリカの自動車業界の国際競争力の強化が期待される。

2013年に開始したAPDPも、それ以前の政策を踏まえて導入された。2013年から2019年までの間に、自動車関連の輸出額は96.4%成長。2019年の車両輸出額は前年度より14%増加し、過去最大の104億ドルであった。政府の継続的な優遇措置が期待できるという事実は、長期投資促進にとっての重要な要素である。



国内での自動車生産が進む一方、約70%は輸入車両だ。また、南アフリカは、中古車購入が新車購入を上回る市場。TransUnion Africaが四半期ごとに発表している、車両購入のためのローンのデータに基づいた算出された指標によると、昨年末時点において、中古車購入と新車購入の比率は2.31対1という数字だった。

南アフリカでは、ケープタウンやヨハネスブルグといった都市の一部を除き、車での移動が避けられない。輸出増加だけでなく、国内需要の高まりや、電気自動車といったクリーンな選択肢の増加、カー・シェアリングやサブスクリプション・サービスなど新サービスの展開も含め、業界の活性化に期待したい。

文・写真=MAKI NAKATA

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