世界フィギュア現地取材、ベテランカメラマンが初めて感じた緊張感

フィギュアスケートの世界選手権が3月24日から28日まで、スウェーデンのストックホルムで開催された。

無観客、選手・競技関係者の外部との接触を遮断する「バブル方式」で開催された今大会には、日本から男子/女子/ペア/アイスダンスの10選手が参加し、全ての種目において、北京五輪の代表枠を獲得して幕を閉じた。

昨年は新型コロナウイルスの影響で中止されたため2年ぶりの開催であったこと、北京五輪の代表枠がかかった重要な大会であったこと、そして、初期のコロナ対策が話題となったスウェーデンの首都ストックホルムでの開催ということで、選手たちはもちろん、関係者や伝えるメディアにとっても独特な雰囲気の中で迎えた大会となった。

現地から、その模様をカメラマンの田口有史が伝えてくれた。


今回の取材ほど、本当に撮影ができるのか半信半疑であったことはない。

思えば、昨年の世界選手権はカナダのモントリオールで行われる予定だった。しかし2月から世界的流行の兆しを見せ始めた新型コロナウイルスの影響で、大会は直前にキャンセル。アジアから北米に向かうと入国できなくなる可能性もあったため、メジャーリーグの取材をしながら大会の開催を待っていた私は、この中止を皮切りに、テニス、ゴルフ、バスケットボールNBA、メジャーリーグと次々と大会、試合がキャンセルとなり緊急帰国。そのままコロナとの戦いは長く続くことになった。

それから約1年。2021年世界フィギュアスケート選手権をスウェーデンのストックホルムで迎えることができた。

1年も経てばパンデミックの状況は落ち着いているだろうという目論見は見事に外れ、今回、日本を出入国するには、今までで最も厳しい条件であった。

2月に取材申請が始まるとともに、スウェーデンは日本人の入国を原則停止。例外的に認められるためには、その分野で欠かすことのできない人物であるという証明と、国境通過48時間以内の陰性証明書が必要となり、たとえその書類を持って行ったとしてもスウェーデンに入国できる確約はない。

また日本帰国時には、搭乗前72時間以内の陰性証明書と、到着から3日間、検疫官の指定する場所において隔離措置が取られることになる。

それだけ大変な準備をしなくてはならなくても、今回の世界フィギュアを撮りたいと思った理由は、15年以上撮り続けてきた全日本フィギュアを撮影できなかったこと、来年行われる北京オリンピックの出場枠がかかる大事な大会であるということ、そして、この状況で競技を続けている選手たちの姿をきちんと残して、実際に見ることのできないファンの方々へその姿を写真で届けたいという想いからだ。取材するチャンスが少しでもあるなら、高い障害があっても向かわないわけにはいかないと思った。

羽生結弦
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文、写真=田口有史 編集=宇藤智子

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