こうしてたどり着いたストックホルムは、パンデミック下のアメリカでメジャーリーグを、そしてエジプトでハンドボールの世界選手権を撮影してきた私でも、想像以上に危険を感じる状態であった。
まず、空港に到着するなり、警備員が誰もマスクをしていない。入国審査官もマスクをしていなければ、ホテルへ向かうタクシーの運転手もしかり。街を歩く人々も、ほぼ誰一人マスクをせずに話しながら歩いている状況に、果たして無事に撮影をすることができるのかと強い不安を感じることになった。
1週間の自宅待機勧告に従って早めにストックホルム入りしたものの、街はそんな状況。取材証を受け取るためのPCR検査、そして大会中は3日に一度の抗原検査が我々プレスには義務付けられている。
競技関係者以外はバブル方式ではなかった。飲食店ではキッチンにいる人も誰もマスクもしていない状態で、外食もできないままの生活。検査をクリアしなければならない重圧が続く中、女子ショートを迎えられた初日はカメラマンみんなでほっとした。
選手たちは20日、21日に現地入り。ただでさえ激しいプレッシャーがかかる大舞台であるうえに、いつもとは全く勝手が違う大会運営、緊張感の中での戦いとなった。そのためのコンディショニング、特に精神面のコントロールの難しさは大変なものだった、と強く言える。
実際、SPが終了した頃には筆者も、ストックホルム到着後あるいは日本出発前から続くこの緊張感により、自身の感覚がなかなか定まらず、仕事もままならないほどのこれまで感じたことがない激しい疲労感に襲われた。
そんな中、渾身の力のこもった演技を見せてくれた選手たちには心から敬意を表したい。また読者の皆さまにも、お届けした写真から、選手たちのフィギュアスケートにかける熱い想いを感じていただけると幸いだ。
SP首位)フジテレビ実況・西岡アナウンサーの「観客の歓声が聞こえてくるような」という言葉どおりの圧巻の演技を見せた羽生選手
SP2位)若さはじける、躍動感あふれる演技を見せた鍵山選手。初出場の大舞台で、史上8人目・100点超えの高得点をたたき出した
SP2位)最終滑走のプレッシャーの中でも「しっかり集中できた」と語る紀平選手。大きなミスなく貫禄の演技を見せた