メルセデス・ベンツがしなやかさを見事に表現したSUV

数年来のSUVブームは、まさに多様化する生活のなかでユーティリティービークルが求められたことを象徴する。より便利に、より豊かに。可能性は広がる。


今回はMercedesBenz GLB


”本家”というのは往々にして、しなやかだ。変化にも進化にも、柔軟な姿勢で取り組む力を持っている。たとえばメルセデス・ベンツ。なかでも、そのしなやかさをクルマのあり方で見事に表現している好例が、2020年6月に日本発売された「メルセデス・ベンツGLB」だ。

1886年に内燃機関搭載の自動車を開発したカール・ベンツの技術をオリジンとするだけに、メルセデス・ベンツは自動車界の”本家”みたいな存在。かといって、セダンばかり作っているのではない。

いまやSUVのラインナップだけで9車種を揃える。まさに世のトレンドに、柔軟に向き合っているではないか。

SUVの布陣は、もちろんいたずらに車種を増やすものではなく、細分化された広い層を対象にしているものだ。縦軸は機能あるいは価格、横軸はユーザーの年齢として車種構成を眺めると、メルセデス・ベンツの、隙のないマーケティングに感心する。

比較的買いやすい価格設定で、より若い層への訴求もおろそかにしていない。それがGLBだ。ずばり、若々しく行動的。様々な用途に対応できるので、対象ユーザーの範囲も広いだろう。

特徴はパッケージにある。全長4.6mと比較的コンパクトな外寸ながら、3列シートを備えた7人乗り。同時期に出た2列シートの「GLA」と同じ1949ccディーゼルエンジン搭載でも、GLBには前輪駆動モデルが設定されている。

一般的に、4輪を駆動したほうが多少ボディが重いぶん乗り心地がよく、かつ前後輪を駆動するため引っ張る力と押し出す力が働き、安定した走りが味わえる(ことが多い)。GLA200d 4MATICと乗り較べてみると、前輪駆動のGLB200dでも不満はなかった。

全高1.7mで機能主義的なスタイルであるものの、身のこなし、つまりハンドリングは意外なほど軽快。”本家”はしなやかに、いいものをつくるのだ。

text by Fumio Ogawa | edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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