バイデン政権、「巨大テック解体論」の若手学者をFTC委員に指名

コロンビア大学法科大学院准教授 リナ・カーン(An Rong Xu for the Washington Post)

ジョー・バイデン大統領は3月22日、コロンビア大学法科大学院の准教授のリナ・カーンをFTC(連邦取引委員会)の委員に指名すると発表した。カーンは、大手テクノロジー企業の独占的行為に批判的なスタンスをとることで知られている。

カーンは、2017年に発表した論文「Amazon’s Antitrust Paradox(アマゾンの反トラストの逆説)」でアマゾンが反競争的な戦術をとり、政府がそれに適切に対処できていないと述べていた。

カーンは、コロンビア大学の反トラスト・競争学の准教授に就任する前に、超党派の下院委員会のスタッフとして、アマゾンやアップル、フェイスブック、グーグルの独占的行為を調査していた。

彼女が委員になるためには、上院での承認が必要だが、カーンは以前、FTCのロヒット・チョプラ委員のアドバイザーも務めていた。

今回のカーンの指名は、シリコンバレーに対する監視と規制を強化しようとする動きが政権内部で活発化する中で行われた。16カ月に及ぶテック企業の調査が昨年10月に終了した際に、カーンをはじめとする下院司法委員会のメンバーは、GAFAと呼ばれるテック業界の大手が権力を乱用し、小規模な競合企業を押しのけていたとする論文を発表し、反トラスト法の抜本的な見直しを提案した。

論文では、「かつて既存の体制に挑戦する弱小勢力だったスタートアップが、今では、石油王や鉄道王の時代に見られたような独占企業になってしまった」と述べられていた。しかし、大手テック企業を規制すべきだという意見が超党派で広がる一方で、その方法については共和党と民主党の間で意見が分かれている。

また、民主党の議席は両院の議会で共和党を上回っているが、その差はごくわずかであるため、テック企業の解体につながるような大胆な提案で、支持を獲得するのは難しいとも考えられる。

カーンの指名については、消費者保護団体のパブリック・シチズンなどの団体が歓迎しており、「バイデン政権が反トラスト法の施行について、より積極的であることを示す希望的な兆候」との声が上がっている。

しかし、カーンは、自身の経歴や過去の著作について、共和党議員から質問を受ける可能性が高い。共和党のマイク・リー上院議員は先日の声明で、カーンの指名が「非常に気がかりだ」と述べていた。

「ロースクールを卒業して4年も経っていない彼女には、FTCの委員という極めて重要な任務に必要な経験が不足している。彼女の反トラスト法の施行についての意見も、法に則った慎重なアプローチとは言い難い」とリーは述べていた。

編集=上田裕資

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