「学習レシピ2万件以上と白紙状態のAI」それぞれに、創作料理を考えさせたら──

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2万件以上のレシピを学習させると──


次に、ケーキのレシピだけでなく、スープ、バーベキュー料理、クッキー、サラダのレシピも学習させてみた。学習のもとになるレシピは、ケーキのみのデータセットでは2431件だったのに対し、今回は2万4043件と10倍近くあった。AIの創作したレシピを見てみよう。

スプレッド・チキン・ライス
チーズ/卵、サラダ、チーズ

種を取った心臓 900グラム
細かく刻んだ新鮮なミントまたはラズベリー・パイ 1カップ
すりおろしたカトリマ 1/2カップ
植物油 大さじ1塩 1個
コショウ 1個
砂糖、砂糖 大さじ2と1/2

葉でないものを混ぜあわせ、とろみがつくまでかき混ぜる。次に、卵、砂糖、はちみつ、キャラウェイ・シードを加え、弱火で煮る。コーン・シロップ、オレガノ、ローズマリー、白コショウを加える。熱でクリームを入れる。残りの小さじ1杯のベーキング・パウダーと塩を調理して加える。350°Fで2~1時間焼く。熱々のまま食卓へ。分量:6人前



今回のレシピは完全にめちゃくちゃだ。AIは、チョコレートを使うのはどういうときで、ジャガイモを使うのはどういうときかを理解する必要があった。焼く必要があるレシピもあれば、じっくりと煮こむ必要のあるレシピもあった。でも、サラダに加熱調理はいらない。学習して理解しなければならないルールが山ほどあったせいで、AIは薄っぺらい知識を身につけるはめになった。

そのため、商業的な問題や研究の問題を解決するためにAIをトレーニングする人々は、何かに特化したトレーニングをするほうが賢明だということを知っている。スプレッド・チキン・ライスを発明したAIよりも、別のアルゴリズムのほうが有能に見えるとしたら、それはたぶん、後者のアルゴリズムの取り組んだ問題のほうが狭く、入念に選び抜かれているからだろう。仕事の幅が狭いほど、AIは力を発揮できるのだ。

C-3POと家のトースターのちがい


だからこそAIの研究者たちは、現在使われている特化型人工知能(artificial narrow intelligence:ANI)と、本や映画によく出てくる汎用人工知能(artificial general intelligence:AGI)を明確に区別するのだ。

SkynetやHALなどのスーパーインテリジェントなコンピューター・システムや、ウォーリー、C-3PO 、データ(『新スタートレック』シリーズに登場するアンドロイドのこと)などの非常に人間的なロボットをめぐる物語は、みなさんも知ってのとおりだ。こうした物語に出てくるAIは、確かに人間の感情の機微を理解するのに苦労することもあるけれど、さまざまなモノや状況を理解し、うまく対応することができる。汎用人工知能は、チェスで人間を打ち負かし、物語をつくり、ケーキを焼き、ヒツジについて説明し、ロブスターよりも大きなモノを3つ挙げることができる。まちがいなくSF世界の話だし、ほとんどの専門家は、汎用人工知能が実現するのは何十年も先だと口をそろえている。実現するとしたら、の話だけれど。



今日の特化型人工知能はそれと比べるとずいぶん雑だ。C-3POと比べれば、現代の特化型人工知能の性能はトースター並みだろう。

たとえば、チェスや囲碁などのゲームで人間を打ち負かしてニュースになるようなアルゴリズムは、たったひとつの特化した作業では人間の能力を凌駕する。でも、特化した作業に関していえば、機械はとっくの昔から人間に勝っていた。たとえば、計算機は割り算の能力では常に人間を上回っていた。でも、いまだに階段ひとつ歩いて降りることすらできないのが現状なのだ。

(この記事は、ジャネル・シェイン著『おバカな答えもAIしてる』から編集・引用したものです)

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