経済回復時初期の長期金利上昇や政策金利の引き上げは、市場がまだ傷跡の癒えてない段階では、敏感に反応する。今回も低金利政策から、景気の回復が見込める段階が少しずつ見えてきている段階に入り、2月で6.2%の失業率がさらに低下し、労働参加率が高まれば、金利の引き上げをにらんだ展開となりそうだ。
ゴールドマンサックスも、現在の失業率が4.1%とコロナ前の水準に回復すると楽観的な予想を出している。
ニューヨーク市の金融関連の会社も、そろそろ在宅勤務を打ち切り、再びオフィスに戻る動きを促進し始めた。日系の会社では、今秋の9月からはリモートワークを止めて、オフィス勤務に戻すと、すでにアナウンスしているところもある。
マンハッタンの空いたスペースに再度新しいテナントが入るにしても、小売店やレストランが建築許可を受け、内装からつくり直し、営業を始めるまでには、最低でも3カ月から1年はかかると私は見ている。これから店舗の建築ラッシュは起こり得るが、9月からコロナ禍前の状態に戻ることができるというのは、楽観的な見通し過ぎると感じてしまう。
ドゥブロヴニクの自由の価値に共鳴
ブルムバーグ・ニュースによれば、今年2月の時点で、アートやカルチャーに関する仕事の3分の2がニューヨーク市から消えたという。ミュージカルの中心地であるブロードウェイでは、役者だけでなく、裏方やミュージシャンなどの人たちも、すでに生活のために他の仕事に就いており、急には舞台の現場に戻れない。アートやカルチャーで旅行者を惹きつけてきたニューヨーク市の苦境は続く。
フロリダ州のマイアミからウェスト・パームビーチにかけての地域には、金融機関を誘致して「南のウォール街」を築く計画があり、コロナ禍を契機に、かなりのウォール街の関係者がニューヨーク市周辺からフロリダに移住した。
しかしすべての人がそのまま定住とはならず、ワクチン接種の進捗とコロナ禍の収束を見込んで、再びニューヨーク市近辺に帰る動きも出てきている。まだ元には戻ってはいないが、やはりニューヨークのレストラン、文化施設、劇場などの魅力には替え難いものがあるようだ。
2月にはマンハッタンのレント市場が10年ぶりの安い水準にまで落ちた。それが魅力と映り、マンハッタン回帰の動きが現れ始めている。