ワクチン接種が始まると、街では、急速に再び1年前の生活に戻っていけそうな活気が感じられるようになった。
ニューヨークの中心地マンハッタンでも、レストランの収容人数が郊外同様に50%まで拡大された。郊外のモールに行くと、こんなに人が集まっていいのかと思うくらい、マスクをしつつも人が押し寄せている。知り合いの老人も、ここ1年、随分体調が悪いと言っていたが、ワクチンを接種して安堵したのか、途端に元気になって来たと笑っていた。
政府もFRBも失業率と労働参加率を注視
3月に入り、アメリカでは、追加支援策として1人1400ドルの給付金支給が決まった。これだけで全体として1兆9000億ドル(約200兆円)規模の予算となる計算だ。昨年6月の給付金1200ドル、年末の600ドルに続く、第3弾の給付金支給となる。
シカゴ大学のデータによれば、昨年の1200ドルの支給後、10日間で、その3割が消費に回ったということもあり、第3弾の1400ドルも同じく消費に回り、景気の底上げになるのではないかと言われている。
FRB(連邦準備制度理事会)は、2023年までは低金利政策を維持する方針だ。経済回復に伴いこれまでの見通しは上方修正され、インフレーションは2%を少し超える程度なら許容するということでもある。
ニュースでは、長期金利の上昇やインフレ率ばかりが焦点になりがちだが、ジェローム・パウエルFRB議長も、経済回復と失業率の低下、労働参加率の向上を注視している。必要なら政策金利やインフレ率をコントロールするということだ。
さらに、ジャネット・イエレン財務長官も、失業が長引き、働く意欲を失う人が増加すると、表面的に失業率は低下する点を懸念しており、労働参加率が下がったままでは潜在的な経済回復期の成長には繋がらないとしている。
2008年のリーマンショック後、政府は歴代を上回る量的緩和政策(QE)を、QE1、QE2、QE3と行った。しかし、2013年5月に、当時のベン・S・バーナンキFRB議長が量的緩和政策の縮小を示唆しただけで市場が敏感に反応し、長期金利が上昇、株価が下落する「テーパー・タントラム(量的緩和政策の縮小、テーパリングによるかんしゃく)」が起きた。
当時のダウは、いまの半分くらいの水準だったが、1カ月で1000ポイント、約6%も下落した。QE3は、その後2014年10月末まで継続されて、終了したが、その直前の9月半ばからは、やはり1カ月で1000ポイント、約5.7%下落した。
2015年11月には、FRBはリーマンショック以来7年にわたって維持してきた政策金利0.25%を、0.5%に引き上げ、その後2018年12月には2.5%まで段階的に引き上げ、2019年5月まで継続した。