・リスクに対処することで、AIは社会的利益を拡大することができます。
・世界経済フォーラムの「グローバルAIアクションアライアンス」は、100社以上の企業を含むマルチステークホルダー・グループを集結し、包括的で信頼性と透明性の高いAIの導入を加速させています。
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)は、AI(人工知能)は2030年までに15兆ドル以上の経済効果を生み、世界のGDPを14%向上させる可能性があるとしています。
今後10年間でAIは最大の経済機会となり、現在の保険、石油・ガス、商業用不動産、自動車産業を合わせたものよりも大きな価値をもたらすことになります。その過程で、AIは社会に大きな恩恵をもたらすでしょう。
グーグルによる2018年の調査では、社会的利益を促進する2602のAI活用事例が特定され、農業収量の拡大、労働者のリスキリング(新たな学び)、新型コロナウイルス感染拡大との闘いなど、重要な社会的課題に対処するためにAIを活用するケースが増えています。
しかし、AIの経済的・社会的な可能性が明らかになるにつれ、必ずしも安全とはいえない、あるいは理論的でないAIシステムがもたらすリスクも浮き彫りになってきています。
最近は、顔認証や自動意思決定、新型コロナ関連の追跡に関する論争が巻き起こっています。これは、AIの可能性を最大限活用するためには、AIが倫理的に構築・使用されているという市民や政府の信頼に基づいた確固たる賛同が必要であることを示すものです。
多くの企業や政府はこの点を認識しており、現在までに175を超える個別の原則が提案されるなど、AIの開発と利用に関する倫理原則を明確化する作業が進んでいます。
AIの倫理ガイドラインが爆発的な広がりを見せていることは歓迎すべきことですが、その一方で、システムを設計して展開するよりも、システムが満たすべき倫理基準を定義する方が簡単であることから、実装との間にギャップが生じています。また有望な活動はサイロ化した組織内で行われており、学習や行動、インパクトを大規模に推進するための仕組み自体がほとんどないことから、学習のギャップも生まれています。
残念ながら、AI倫理に関する取り組みに加え、経済的・社会的恩恵を社会全体に公平に分配することで成功を収めているAIの実装さえも、サイロ化した組織の仕組みの中で行われているのです。
AIは何十億人もの生活を改善すると期待されていますが、AIエコシステムはグローバル市民の大多数に十分なサービスを提供できていないというのがこれまでの現実です。
包括性の欠如も一因となっています。ニューヨーク大学のAIナウ研究所によると、AIに関する主要な会議に招かれる著者のうち女性はわずか18%。AI分野の教授の約80%は男性である上、ほとんどの大手テクノロジー企業で、非白人のエンジニアは従業員の5%に満たないのが現状です。
現在のAI導入の流れが続けば、AIがもたらす経済的恩恵の約80%を北米、欧州、中国が獲得し、残りの世界人口の3分の2に残された利用はわずか20%となってしまいます。