これは、世界的な不平等を悪化させ、社会経済的な不安定さを助長するものであり、何十億人もの人々の生活を向上させ、世界の状態を改善させる大きな機会が失われてしまうのは言うまでもありません。
多くの人が、AIが形作る未来に恐れを抱いているのは無理もないことです。オックスフォード大学と欧州委員会による最近の研究によると、アメリカ人の84%とヨーロッパ人の88%が、有害な社会的結果をもたらす可能性に鑑み、AIは「慎重に管理されるべき」と考えています。
AIが産業や社会に与える影響は日々加速しており、その展開をどのように管理するのかが大きな問題となっています。AIが倫理的に、そして、世界の公共利益を目的に利用されることを保証するために、協力的な取り組みをこれまで以上に充実させることが急務となっています。
有効なAIの活用に向けたグローバルな連携
これらのことを受け、世界経済フォーラムは、グローバルAIアクションアライアンスを立ち上げました。これは、信頼性と透明性の高い包括的なAIの採用を、グローバルに、そして産業分野を超えて加速させることを目的とした、新たなマルチステークホルダー連携プラットホームとプロジェクト養成の仕組みです。
アライアンスには、100社以上の主要企業、各国政府、国際機関、非営利団体、学識者が集結し、団結してAIの社会的な利益の最大化に取り組んでいます。アライアンスのメンバーは、AIシステムが倫理的に実践されるよう、そして、これまでAIの恩恵を受けてこなかったグループを含む社会全体に貢献できるよう、最も有望なツールを特定し提供できるよう、協働しています。
アライアンスは、メンバーがリアルタイムで学習に取り組み、倫理的なAIへの新しいアプローチを試験的に実施し、ベストプラクティスの採用を拡大。AIの恩恵がすべての人に共有されることを保証するための集団行動をかなえるためのプラットホームを提供します。
このアライアンスは、パトリック・J・マクガバン財団より助成金を受け、産業界、政府、アカデミア、市民社会のグローバルリーダーで構成される運営委員会によって監督されており、IBMの会長兼CEOであるアービンド・クリシュナ氏と、パトリック・J・マクガバン財団の会長であるヴァリス・ダール氏が共同議長を務めています。
AIがもたらす様々な課題に一組織で対応することはできません。また、AIが社会にもたらす計り知れない恩恵を単一のアクターが提供することもできません。克服するべき課題が非常に多く、利用できる機会が無数にある中で、AIの恩恵を最大限に引き出し、社会全体に公平に分配することができるのは、確固とした協力関係によってのみです。
何も行動をとらないことはあまりにも代償が大きい一方で、行動を起こすことよって得るのは大きな利益です。いまこそ、AIの利活用のために、人間主体のポジティブな未来を形作るグローバルなアクションを取るべき時なのです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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*クレジット肩書きは以下の通り
Kay Firth-Butterfield, Head of Artificial Intelligence and Machine Learning; Member of the Executive Committee, World Economic Forum; Mark Caine, Project Lead, Artificial Intelligence and Machine Learning Project Lead, Artificial Intelligence and Machine Learning, World Economic Forum