「何もない」からできたまちづくり。小山薫堂がみた幸せの閾値(いきち)

観光ではなく、関わって光る「関光」を目指す甲佐町


幸福の閾値(いきち)を下げることで気づく豊かさ


では、町を訪れた人が体験の中で感じる没入感は、どのように産むことができるのだろうか。〈何もない町〉の魅力はどこにあるのだろうか。

「甲佐町のような地域に行くと、普段聞こえない鳥のさえずりを聴いて、『幸せってこういうこと』と感じることがある。『幸せの閾値(いきち)を下げる』機会になるんですよね。以前、学生らに『幸せの閾値を上げるな』とよく言っていました。最初は満足していたのに、良い体験をしたら閾値が上がってしまって、なかなか満足できない。

※閾値:いきち、しきいちを読むこともある。反応や現象を起こさせるために加わる最小の刺激の意。

だから、大きな幸せを求めるよりも、常に一定にしていく方が何でも幸せに感じるんです。旅はこの閾値を取り戻すための行為。普段と違う色々な日常を見たり、その地域の暮らしを見ることによって、幸せの閾値を一定にできるんです」(小山氏)

小山薫堂氏

〈何もない町〉であった甲佐町には、幸福のスタンダードが存在している。甲佐町には、人がいる。町の人々と旅人が触れ合うことで、日常にある小さな幸せに気づくことができる。

「地域活性のスローガンとして「町の交差点」とありましたけど、甲佐町の『こうさ』っていいなと思いました。外の人たちにも『甲佐町行ってきて』といいたくなりましたね。『あの人たちに会ってみてよ』と」(小山氏)

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文=上沼祐樹

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