「ごみ」を資産に変える? サーキュラー・エコノミー世界の動向

サーキュラー・エコノミーの構築を(Photo by Unsplash)


バーレーンのタムキーン企業開発基金はこのほど、太陽光プロジェクトへの融資を目的とした銀行向けのブレンドファイナンスプログラムを導入しました。同様のプログラムを、サーキュラー・エコノミープロジェクトにも容易に拡大できる可能性があります。

米国では、主要企業のコンソーシアムが1億ドルのクローズドループファンドを設立。このファンドは、リサイクルインフラの開発に対して無利子で融資を提供しています。このほか、インパクト投資家を含む多数のステークホルダーの共同投資により、5000万ドル超の資金の利用を可能にしました。その概要は、エレンマッカーサー財団のレポートに述べられています。

企業支援のエコシステムでは、さまざまなタイプのシードファンディングを利用可能にして、市場投入が可能な循環型の解決策を生み出すことが鍵となります。現在、英国では、アドバンスロンドンのプログラムが、適格な循環型企業に対するアドバイザリーサポートと共同投資の機会を提供しています。

ベンチャーキャピタルとプライベート・エクイティ・ファンドは、イノベーションラボ、インキュベーターやアクセラレーターによる支援を受けることで、循環型スタートアップ企業に対するサポートを強化できると見られています。

バーレーンのエンジェル投資企業、タンムは、同国のスタートアップ企業に対して初期段階の投資を提供しています。そのマンデートは循環型スタートアップ企業にも簡単に拡大できるでしょう。

このほか、GCCの各都市が循環債、またはスクーク(イスラム債)を発行することで、循環型プロジェクトへの融資につなげられるかもしれません。

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UNEPの循環性アプローチ(イメージ: UN Environment Programme)

未来への投資として


廃棄物を資産に変えるこうしたエコシステムをGCCの各都市に構築するとしたら、当然ながら、そのコストに関する疑問が生じます。この疑問に対して正しいアイデアを得るには、まず、廃棄物管理の年間コスト、失業率の増加、市場の低成長、原材料と商品のコスト上昇、といった点について整理することが必要です。

言い換えるなら、こうしたエコシステムを構築するためのコストとは、未来を生き延びるためのコストです。向こう数十年間だけに関わることではありません。世界銀行は、GCC諸国の経済が2021年には回復に向かい始めると予測しています。したがって、地域経済の成長とより明るい未来を若き起業家に保証する最善の長期経済戦略は、いまこそ検討を始める好機なのです。

廃棄物管理におけるデジタル技術の利用や、オンラインで行われるリサイクルオークションは、インダストリー4.0がいかにサーキュラー・エコノミーに影響を及ぼしているかを示す潮流の一部です。

デジタルプラットフォームが従来型のビジネスモデルを覆しているように、サーキュラー・エコノミーは、消費と生産に関する線形の経済モデルを破壊しつつあります。サーキュラー・エコノミーはまた、グレート・リセットに関する世界的な議論が始まったこのときに、ステークホルダー資本主義を受け入れる絶好の機会も提供しています。

パンデミック後の景気回復を促すため、GCC各都市がデジタルの力を持つサーキュラー・エコノミーを活用し、未来を探求すべきだということは、もはや自明のことなのです。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Ali Adnan Ibrahim, Global Head, Social & Sustainable Finance, Al Baraka Banking Group

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