「ごみ」を資産に変える? サーキュラー・エコノミー世界の動向

サーキュラー・エコノミーの構築を(Photo by Unsplash)


2)都市自体が起業家として行動する必要性

GCCの各都市は、統合的な循環戦略を熟考し、独自の強みを活かして提携、補完し合うことが必要です。このエコシステムを設計するに当たり、各都市には、自ら起業家として考え、行動することが求められます。これにより、循環型のスタートアップ企業と起業家向けの市場が大幅に拡大し、これがGCC全域への拡大を格段にスピードアップさせ、スケールメリットの利用を可能にします。

各都市で多面的な政策をとることで、革新的な循環型ビジネスを可能にする適切なエコシステムを提供できるでしょう。世界各地の他の都市では、すでにそれぞれ戦略が実行されています。こうした戦略的枠組みの主な事例には、次のものがあります。

ブリュッセルの「サーキュラー・エコノミーのための地域プログラム」、コペンハーゲンの「資源・廃棄物管理計画2024」、ロンドンの「サーキュラー・エコノミー・ルートマップ」、パリの「サーキュラー・エコノミー計画」、シンガポールの「廃棄物ゼロマスタープラン」。

プラごみ
再生ペレットの製造販売を行う茨城県笠間市の亜星商事株式会社(GettyImages)

各都市の戦略計画のほか、欧州連合の「サーキュラー・エコノミー行動計画」も、地域戦略をどのように策定し遂行するのか、その好例をほかの地域の政府間機関(GCCなど)に示しています。

3)循環型社会のためのグローバルなパートナーシップの形成

企業サポートプログラムは、アイデアがビジネスになるように支援します。こうしたプログラムは、インキュベーションとアクセラレーションの戦略を用いてアイデアを市場に結び付けます。いたるところで線形モデルの弊害が出ていることから、循環型ビジネスははるかに速いペースでGCC地域全体に規模を拡大できる可能性があります。

世界中の都市が相互に学ぶ取り組みを始めているように、GCCの各都市も、ほかの主要な循環型都市と提携するべきです。

欧州委員会が支援するサキュラー・エコノミー協力都市(FORCE)は、コペンハーゲン、ハンブルク、リスボン、ジェノバが結んでいるパートナーシップで、各都市間の協力関係を促進しています。一方、シンガポールは、サーキュラー・エコノミーを視野に資源回収策について共同で検討するための覚書をオランダと交わしています。

デンマークと中国も循環イニシアティブで提携。北欧諸国はマレーシアとの共同イニシアティブを検討しています。このほか、OECDが一連の「都市と地域のサーキュラー・エコノミーラウンドテーブル」を立ち上げています。

4)経済の新しいバリューチェーンの構築

廃棄物は目下のところ、国家予算上の大きな支出項目となっています。しかし、分別をより効率化すれば、廃棄物を価値ある原材料に変えられるかもしれません。

家庭レベルでの廃棄物の分別は、経済のより効率的なバリューチェーンの構築を促す可能性があるほか、地域のスタートアップ企業は、廃棄物の収集・分別技術の活用において、世界の起業家と提携することも考えられます。

Bee’ahは、スマートセンサー搭載のごみ箱を廃棄物収集に活用しているほか、1200代のエコ車両を導入しています。このほか、同社のリサイクル工場では破砕されたタイヤのゴム粉末を使い、子どもの運動場で使用するゴムマットを生産しています。

ドバイのビッグベリーのごみ箱は、自動圧縮技術を搭載したスマートごみ箱。廃棄物の仕分けと分別を効率化します。サウジアラムコは、化学廃棄物をプラスチック製品の原材料としてリサイクルし、再生プラスチックを道路建設に使用。2016年にConvergeポリオール技術を取得した同社は、回収した二酸化炭素から生成された資材を、食品包装材や断熱材などの製品に使用しています。
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文=Ali Adnan Ibrahim, Global Head, Social & Sustainable Finance, Al Baraka Banking Group

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