アップルウォッチの心電図と血中酸素ウェルネス 医師が語るその真価

デジタルクラウンに指を当てて使う、アップルウォッチ「心電図アプリ」(DenPhotos / Shutterstock.com)


アップルウォッチ健康機能の真価とは


五十嵐医師も田村医師も口を揃えて「医師にとって大変意義深い」と強調するのは、アップルウォッチの「血中酸素ウェルネス」にしろ「心電図アプリ」にしろ、日常生活の中で異常を監視できることによって、健康上の問題の早期発見がしやすいという特徴だ。病気は早く見つかれば見つかるほど治療しやすい。

確かに、従来であれば「何かおかしい」と症状を訴えて病院に行くか、特に自覚症状はないが健康診断を受ける、あるいはそこで異常が見つかって精密検査をするか、一度病気が落ち着いて状態をモニターするために携帯用機器で測るといったパターンしかなかった。

特に、心電図については不整脈が起きている時に取らないと異常が出ず、病院に行った時には間に合わないということもある。常にアップルウォッチを身につけていたら、動悸を感じた時に心電図アプリを作動させるだけでその瞬間の心電図を取ることができるというのはこれまでの状況に比べて大きな有用性となる。

また、「血中酸素ウェルネス」についても、肺の病気の後、常に機械をキャリーで持ち歩いて酸素補給を受けている人が本当に酸素が体中に行き渡っているかを調べるという利用法も今後の展開としては考えられる。機器の簡便さは患者の生活の質の向上にもつながってくる。

血中酸素の低下の原因は肺の病気に限らない。睡眠時無呼吸症候群の兆候を調べるという用途にもいずれはアップルウォッチが役立つ時が来るだろう。

異常があれば病院に遠慮なく行っていい


上記のようなアップルウォッチの心電図異常検出を見越して、五十嵐医師はお茶の水循環器内科に「アップルウォッチ外来」を開いているが、「症状出現時の心電図を記録したいと考えている循環器内科医は多いので、綺麗に記録が取れていれば相談を受け付けてくれるだろう」と話す。もし心配であれば「心電図アプリ」は心電図をPDF形式で出力できるので、そのデータを紙に印刷して行けばよいという。

「血中酸素ウェルネス」についてはどうだろうか。例えば、空気が薄くなる飛行機に乗るなどしてもヘモグロビンの酸素結合能力は強力で、アップルウォッチで測定した酸素飽和度はなかなか下がらない。もし下がっているとしたら、それだけ通常の生理的状態を外れていることになる。

田村医師は「酸素飽和度が90%を切っている、あるいは息切れする、苦しい、だるいなどの自覚症状があって93%以下なら呼吸器内科など病院に行った方がいい」と話す。また、そのときには心電図も同時に測定してきてほしいという。低酸素状態が起こっているとき、それは肺だけでなく、心臓の血を送り出す力が原因かもしれないからだ。


血中酸素飽和度が90%を切るようなことがあったら要注意(oasisamuel / Shutterstock.com)
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文=縄田陽介

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