では、日本発のNFTの可能性はどのように広がろうとしているのか。
上野が代表を務めるdoublejump.tokyoは、2018年4月に設立されたブロックチェーンゲーム開発専門企業だ。同社が2018年11月にリリースした『My Crypto Heroes』は、イーサリアムベースのブロックチェーンゲームとして、取引高・取引量・DAUで世界1位を記録したことがある。
「現時点でMy Crypto Heroesの総売上高は20000ETH(イーサー)超。現在の日本円に換算すると約40億となっています。同作品は国内外のゲーマー層にも人気ですが、最初に入ってきたのは日本のイノベーター層でした。我々が想像していた以上に、日本という土壌にイノベーターが多いということに気づかされました」(上野)
ブロックチェーン×ゲームの相性が良い理由
doublejump.tokyo代表 上野広伸
今回の協業の発表では、スクウェア・エニックスの「ミリオンアーサー」のIP(知的財産)を活用したNFTデジタルシールの開発・販売を行っていくとしている。ミリオンアーサーは根強い人気があるIP。詳細は明かされていないが、リアル世界で行われているキャラクターシールの見せ合い・交換などを、デジタル世界で再現するというイメージが想起しやすいだろう。NFTという切り口から、新たなビジネスモデルの構築を目指す狙いだ。
「今までデジタルアイテムは、手元にあったとしても価値が曖昧な単なるデータにすぎませんでした。一方、NFTはデジタルアイテムのオープン化を可能にし、一気に価値を生み始めている。ブロックチェーンゲームでNFTを楽しんでいるユーザーたちは、2パターンです。ひとつは『価値が上がるのでは?』と考えプレイしている層、そしてゲーム上の自分のアイテムを運営側の都合で消されてしまうのが嫌な層です。いずれにせよ、ブロックチェーンやNFTを取り入れることで、既存のゲーム内では不可能だった価値の保存や転換が可能になります」(上野)
なお、日本ではモバイルオンラインゲーム企業・gumiのIP「Brave Frontier」を使ったNFTが、2020年1月頃から4月頃にかけて業績好調だったという。その後、仮想通貨を使った分散型金融アプリケーション群(Defi)が一時ブームとなり、ブロックチェーンアプリケーションとして一時、市場の関心が移ったものの、昨年末頃から改めてNFTに人気が戻ってきたという。
現在では、NFTと仮想通貨を組み合わせたタイプのジャンルも登場してきているという。とはいえ、世界的にみると、「有名なブロックチェーンアプリケーションの数はまだ100にも満たない」(上野)そうで、まだまだ日本企業やベンチャーにも参入の余地が多分に残されている。