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なおゲームに限らず、NFTの普及の先には「コンテンツの復権」があるというのが、上野、松原の共通した考えだ。

例えば、動画や音楽の配信サービスではサブスクリプションビジネスが一般化して久しいが、これは「コンテンツからもはや価値が失われた状態」(上野)である。ユーザーはサービスに課金するが、コンテンツそのものにはもはや課金しない。しかしNFTが一般化すれば、コンテンツ自体に価値がある状態を改めて生み出すことができる。なお、NFTやブロックチェーンは、クリエイターに利益を還元する仕組みづくりにも長けている。

ダブルジャンプトーキョー 松原亮
doublejump.tokyoビジネスアライアンス担当 松原亮

「ブロックチェーン上には、コンテンツの動きがすべて記録されますので、二次流通市場であっても取引された金額が赤裸々に把握できます。また取引量のうち定められたパーセンテージをクリエイターに還元する仕組みを容易につくることも可能です。従来、コンテンツ産業やエンターテインメント産業は、どちらかというと二次流通を防ぐ傾向にありましたが、ブロックチェーンやNFTは、より多角的にクリエイターに収益をもたらせる特徴があります」(松原)

そんなIPやデジタルコンテンツの価値を高めるNFTの特性は、日本が世界と戦う「最終兵器」になると松原は考えている。

「日本には、ゲーム、漫画、アニメなど、世界中で親しまれてきたIPやコンテンツがたくさんある。NFTという新しい技術にのって流通させることができれば、莫大な価値を生む源泉になるでしょう。現在、デジタルの世界はGAFAなどプラットフォーマーに覇権を握られていますが、日本がNFTと本気で向き合うことができれば、もう一度戦えるチャンスが来ると思います」

今後10年、デジタルに対する信頼を高める手段に


NFTは日本の新たなビジネスチャンスとなるだけでなく、生活に深く浸透したデジタルに対する信頼度を一層高めていく手段になる。最終的に、デジタル/リアルという二分法的な価値観をも突き崩していくかもしれない。上野は続ける。

「私たちは生活の多くをデジタルに依存しています。しかし、そこに価値を保存することをまだまだ信用しきれていません。結局、デジタルの世界はまだ本質的に数字の羅列でしかないのです。ブロックチェーンやNFTは、デジタルデータを『モノ』に転換させ、さらにはその価値を守ることができる技術です。これから10年で、モノや価値、デジタル・リアルという概念に大きな転換をもたらしていくでしょう」

今回、多くの名作を抱えるスクウェア・エニックスが、NFT開発に乗り出したというニュースは非常に刺激的だ。同社は、「サンド・ボックス」というブロックチェーンゲームに投資しており、かねてからNFTなどブロックチェーン×ゲームのシナジーに強い関心を寄せていた。

IPを多数保有する他のゲーム会社、またコンテンツ企業やクリエイターがこれに続けば、業界内だけでなくグローバル市場に大きな波及効果をもたらしていくはずである。そしてそれは、多くの企業との協力を通じて、日本発のNFTを世界に広げようとしているdoublejump.tokyoの思いと重なる。

ブロックチェーン&NFTは、日本の各産業が抱える価値をどのように刷新していくのだろうか。日本のデジタル的価値の掘り起こしという、前代未聞のイノベーションが今まさに始まろうとしている。

文=河 鐘基(ハ・ジョンギ)Forbes JAPANオフィシャルコラムニスト

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