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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」


S500に搭載されるのは3Lの直列6気筒直噴ガソリンターボ。これにISG(インテグレートスタータージェネレーター/モーター機能付き発電機)を組み込んだ48Vマイルドハイブリッドとなる。直6エンジンの最高出力は435PS、最大トルクは520Nmを発生し、9段ATとの組み合わせで0-100km/hの加速は4.9秒を記録する。加速性は低速から力がジワジワと盛り上がるし、2250kgという車重を感じさせない。

ISGが搭載されることによって、クルマの血管とも言えるハーネスを小型化・軽量化できると同時に、十分な電力が必要となるSクラスのモーターが問題なく働ける。同車には、エアコンを動かすために20、4つのシートを動かすための19、そしてリラクスゼーション(シートのマッサージ機みたいな機能)のために4つなど、多くのモーターが搭載させている。

後部座席の写真

日本仕様はエアサスペンションの「エアマチック」になっているので、乗り味や乗り心地は申し分ない。実際運転してみると、スタアリングは充分な重み感もあって、スッとコーナーに入っていけて、きれいにラインをトレースしてくれる。

また、新型Sクラスの目玉の技術である4WS(4輪操舵)も標準装備となるが、後輪の切れ角は60km/h以下では逆位相で最大10度、60km/h以上では同位相で最大2.5度と、小回りは小型車のように切れる。駐車する時にとにかく効く。ただ、ホイールベースが3.2m以上ある大型車だから、小回りが良く効くと言っても、慣れが必要だ。この新しいステアリング技術に慣れていなければ、コーナーでハンドルを切りすぎて縁石にぶつけてしまうこともあると思う。

ほかにも、今回のSクラスでは声が出るほど驚くところが多い。運転席に初めて座り、メルセデスのスタッフが同社初の技術を説明してくれたとき、まるでジェームス・ボンドになった気分だった。

同車には、指紋、顔、声による認証機能が採用しており、乗員に応じてシートやステアリング、ドアミラーの位置、コックピットディスプレイの表示スタイル、ペアリングした携帯、ナビゲーションのお気に入り設定などが自動で読み込まれる。道路を走るスーパーコンピューターだ。

指紋認証画面

静粛性はレクサスLSには多少届かないにしても、後部席に乗っていると、まるで雲の上を走っているようなフィーリングだ。両車の乗り心地を比較すると、僕はSクラスの方が人間に優しいと思う。レクサスLSの後部席では、路面のウネリから来るビビリ振動が「デジタル的」に体に伝わるのに対して、Sクラスだとその振動は「アナログ的」に感じるからだ。

何を言いたいかというと、人間にやさしいアナログな振動では、長距離ドライブでは、より車酔いしないと思う。やはり、Sクラスのシャシー剛性とエア・サスペンションの質は高い。エア・サスペンションがついたことで乗り心地はセグメントトップと言えるけど、もう一つ乗り味が向上した理由は、旧型のランフラット・タイヤから通常のラジアルに変更したことだね。

この7代目には、全く新しいコクピットが採用された。センターコンソールにある12.8インチの縦型タッチスクリーンで全ての機能にアクセスできるけど、画面の高画質の度合いに驚いた。その色合いと絵の奥行き感は間違いなく世界一のディスプレーだと思う。

もちろん、「ハイ・メルセデス」と呼びかけるAIによる音声入力の「MBUX」も多くの機能に連携しており、よく反応してくれる。「おいしいラーメンが食べたい」というと、その近辺のラーメン店を紹介してくれるし、「暑い/寒い」と口で言えば、それに応じて温度設定を変えてくれる。

メーターパネル

安全装備も充実している。ちなみに先進運転支援機能(ADAS)関連では、ドイツ国内で認可待ちの“レベル3”相当のドライブ・パイロットも日本仕様には搭載されていない。LiDARや高精度GPS、3Dダイナミックマップなどのデータを連携させるシステムは、ハンズオフの運転を実現させるための技術となるだろう。

新型Sクラスの進化点はあまりに多く、最先端技術が山ほど詰まっているので、一本の記事には収まらない感じがする。1720万円という価格からスタートするS500ロングは、ショーファー・ドリブン(運転手付き)の高級車をお探しの人には、うってつけの車両としか言えない。その乗り心地、静粛性、走り方、高級感で五感を癒してくれる最高級のマシンだ。

国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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文=ピーター・ライオン

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