国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

メルセデスベンツ S500ロング4MATIC(4WD)

後部席で、僕の隣に乗ったピアニストの山口ちなみさんは眉を上げて言った。

「こんなに室内が静かなクルマには座ったことがありません。Sクラスは凄いですね。目を瞑(つぶ)ると、まるでコンサートホールでピアノ・コンチェルトを聴いている気がします。ピアノの小さい音でもとてもクリアに聞こえるし、全体的に音のバランスがいいですね」と、ロシア人作曲家ショスタコーヴィチの作品を聴きながら評価した。

確かに彼女が言う通りだと思う。新型メルセデスベンツSクラスの静粛性は業界トップレベルだし、乗り心地もピカイチ。しかも、31スピーカー入りのバーメスター製サウンドシステムも素晴らしい。僕はその衝撃的なニューモデルの噂を確かめたくて、S500ロング4MATIC(4WD)に乗ってみた。

今、日本市場には、S500ロングとS400dのターボディーセル仕様の2種類があるが、日本では顧客の半分ほどはロング仕様を選択するそうだ。ちなみに英国だと8割以上の顧客がロングを選ぶそう。つまり、ロンドンを走るほとんどのSクラスは、運転手付きなんだね。



世界一のクルマと呼ばれているSクラスがフルモデルチェンジを行った。7代目のフラッグシップモデルとなるS500は、運転しても、後部席に座っても、これからの世界のクルマ作りに大きく影響する車だと感じた。その走り、安全性、快適性、技術、質感、乗り心地などがライバル社の高級車にヒントを与えていくと言える一方で、Sクラスだって他社からデザインヒントを受けているとも言える。お互い様というか、自動車業界は互いを刺激し合っているんだよね。

ということで、まずは外観デザインをチェック。ポップアップ式のドアハンドルは新しい。鍵を身に着けた人がクルマに近づくと、Sクラスがまるでオーナーを歓迎しているかのように、ドアハンドルを自動的にポップアップしてくれる。これはメルセデス初だし、ヒントはテスラのモデルSのハンドルからもらったように感じた。

また、一新したインパネを見ると、またテスラみたいに、メルセデス初の巨大な12.8インチの縦型タッチスクリーンを採用している。でも、類似点はそこで終わる。

運転席の写真

Sクラスの外観は全く一新し、全体的にエッジがより和らぎ、面がよりスムースになった。6代目と比べて、ヘッドライトやグリルがコロッと変わって、より存在感を増したと思う。グリルが6代目の四角形から新型の六角形に変身したことで、SNSでは賛否両論があるようだけど、僕は勝手に、より品が出たと思っている。皆さんどう思いますか?

グリルまわり

グリルの真ん中に黒くて大きな板的な物体がついているが、そのすぐ後ろには、レーダーやセンサーが内蔵され、その黒い部分はそれらを保護するパーツとなっている。デザインより安全性が勝るからだ。運転支援システムに必要なカメラ、レーダー、センサーなどが増えてくると、メルセデスベンツに限らず、こういう部分が増えると思う。

僕が乗ったS500ロングは、AMGライン仕様だったので、フロントバンパーのクロームメッキのアクセントと、20インチの大型ホイール、そしてロードノイズを和らげる「ノイズ・リダクション」のタイヤを履いている。その組み合わせはそれなりにスポーティかつラグジュアリーに仕上がっていた。

文=ピーター・ライオン

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