ビジネス

2021.03.22 06:00

狙うは遠隔医療業界のGAFA、米スタートアップが新たに資金調達


ミシガン大学医学部の遠隔医療プロジェクトマネージャー、ブランディ・クヌードソン(Brandy Knudson)は、「私たちはHRSを、車で言うとキャデラック(高級ブランド)だと考えている」と語る。「患者の再入院や、不要な来院を減らしたいと考えている私たちにとって、HRSは大きなギャップを補ってくれるサービスだ」

HRSの収益源は、医療機関向けに有料で提供するサブスクリプションサービスだ。同社のソリューションは、医療機関が提供する治療システムに統合され、患者が追加費用を負担する必要はない。HRSは、患者の症状や、テクノロジーを使いこなす能力がさまざまに異なることを認識しており、幅広い製品を提供している。

たとえば、容体の悪い患者にはパルスオキシメーターが提供されるし、回復期の患者は、HRSのスマートフォンアプリに症状を手動で入力できる。こうした患者データはすべてクラウドに保存されており、臨床医は病状の経過や健康データの傾向を容易に把握できる。

HRSのサービスを導入した大規模な医療機関では、その成果が出ている。たとえばペンシルベニア大学病院システムでは、すべての心不全の患者に関して、最初の入院から30日以内に再入院する患者の数を50%以上減らすことに成功した。

また、民営の非営利医療サービスネットワーク、ファーストヘルス・オブ・カロライナズ(FirstHealth of the Carolinas)では、2016年にHRSのサービスを導入して以来、患者たちが支払う医療費を190万ドル以上削減できたとしている。

今回の資金調達ラウンドを主導した、ペンシルベニア州フィラデルフィアに本拠を置く未公開株投資企業LLRパートナーズのパートナー、ササンク・アレティ(Sasank Aleti)は、「患者たちは、できるだけ長く自宅で生活し、在宅で医療ケアを受けたいと願っている。また、慢性的な疾患を抱える患者の数は確実に増えている」と指摘する。「医療システム内のコストを削減させ、治療結果を改善し、患者の診療体験を向上させる事業に投資するという我々の判断基準に、HRSは合致していた」

HRSのバウアーにとって、自社の未来は、在宅医療のさらなる普及にかかっている。今回のラウンドで調達した7000万ドルをもとに、HRSは新たな医療機関と契約を結び、対応可能な疾病の数を増やすことで(現時点では90の疾病に対応している)、対応患者数を100万人以上に増やすという目標を掲げている。そして、2021年内に従業員を250人にまで増員する計画だ。

「当社がグーグルのようになれない理由があるだろうか? アップルのようになれない理由があるだろうか?」と、バウアーは意気込む。「我々は勝つために事業を行っている。目指すのは勝者だ」

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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