ポルシェ タイカンが提供するのは「楽しみ」

Porsche Taycan

高い動力性能により、クルマを走らせる爽快感をもたらすスーパースポーツカー。 電動化だけでなく、居住性にも趣向を凝らす傾向がみられる。


今回はPorsche Taycan


電気自動車に何を求めるか。走行経済性、あるいは環境問題解決に貢献したという満足感、だろうか。EVの多様化は進んでいる。例えば、ポルシェが「タイカン」で提供してくれるのは”楽しみ”だ。

タイカンには、「4S」「ターボ」「ターボS」とグレードがある。電気自動車なのに、排気を圧縮してパワーアップをはかる仕組みであるターボが?と、クルマに詳しい向きなら、けげんに思うかもしれないが、ターボとはポルシェにとって、パワーの記号である。タイカンは速いということだ。

専用設計のシャシーをもち、大容量のバッテリーを床下に搭載。航続距離は400km超とだいぶ長い。一方、重いバッテリーを下に配置したことで、ハンドリング性能がよい。高速道路だけでなく、カーブの連続する道でも軽快に曲がっていく。モーターなので、アクセルペダルへの反応が速く、ひとつのカーブを抜けてから次のカーブまで、あっというまに到達する加速である。ステアリングホイールを動かしたときの車体の反応は、素晴らしく繊細で、これにも感心させられる。

スタイリングでも操縦性でもすべてのモデルのベンチマークは911、というアイコニックな名車の存在にこだわるポルシェの姿勢はタイカンにもあてはまる。先述のステアリングフィールに加え、審美性も同様。美しく弧を描いたサイドウィンドウのグラフィクスも911的。昨今、4ドアセダンは2プラス2として買われている、というマーケティングの調査結果を聞いたことがある。タイカンも、(後席もきちんと使えるとはいえ)クーペ的なイメージが強い。

新しくEVの時代が到来しても、スポーツカーメーカーのポルシェは、自分たちの提供価値を正しく理解している。

タイカンではEVならではのダイレクトな操縦性を実現し、従来と一線を画した新しい価値を創成するのに成功しているといえるのだ。スポーティなクルマが欲しいからEV、という市場が形成されつつある。

text by Fumio Ogawa

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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