ビジネス

2021.03.24

デジタル依存の現代人にうってつけ。ボードゲームもサブスクで

2020年は、過去20年で最もボードゲームが売れた年となった。なかでも成長目覚ましい新興企業「ハント・ア・キラー」とはどんな会社なのか。


米マサチューセッツ州アクスブリッジに住むヘザー・ニコル(31)は、土曜の夜になると親友と一緒に殺人事件の捜査に没頭する。架空の男性バンド『Just4fun』のリードボーカル、ジェイク・モーガンの凄惨な死の真相を解き明かすために、過去の新聞の切り抜きや財務記録、警察の捜査報告書をくまなくチェックするのだ。

ニコルをはじめ約10万人の顧客のもとには、ボルティモアに拠点を置くスタートアップ「Hunt A Killer(ハント・ア・キラー)」から、月額30ドル(約3100円)で謎を解くヒントが入った「箱」が送られてくる。1つの殺人事件は6つの箱で構成され、真相にたどり着くには180ドルかかる。

ハント・ア・キラーの売りは、オフラインでもプレイできること。CEOで元米海軍将校のライアン・ホーガン(36)はこう言う。

「デジタル依存で頭がおかしくなりそうな現代人には、スマホやツイッターなどのあらゆるツールから距離をおく“デジタル・デトックス”が必要なんだよ」

ハント・ア・キラーのボードゲームは、デジタル時代の現代人にうってつけのゲームなのだ。

ホーガンが幼なじみのデリック・スミス(37)とともに立ち上げたこの会社は、サブスクリプション版やプレミアムセット版などを販売している。2019年の売り上げは2700万ドル。パンデミックが追い風となり、20年は5000万ドルを達成する見込みで、初めて黒字転換できるかもしれない。株式の85%を保有するホーガンとスミスの資産は6500万ドルを優に超えそうだ。

1990年代半ば、米国の大学のキャンパスで、ドイツ生まれの複雑な戦略ゲーム『カタン』が広まったのがきっかけでボードゲームブームが始まった。『カタン』は世界中で3000万個以上を売り上げ、25年にわたって年商1億ドルを超えている。北米のボードゲームの売上高は、19年の約34億ドルから24年には約41億ドルに増加するとみられており、業界は、20年には約37%の爆発的成長を遂げている。
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文=エリザベス・ブライアー 写真=テイラー・カースル 翻訳=岡本富士子 / パラ・アルタ 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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