両者はその後数年にわたり、この提携関係に満足しているようだった。タヌスディビョは2017年、トランプの大統領就任式に出席。トランプの息子2人と商談も行い、米大統領となったトランプとの関係を自慢げに語っていた。
バリ島のプロジェクトでは、トランプブランドの施設建設地を確保するために大型ホテルが解体されたが、それから2年近くたった2019年3月、プロジェクトの進捗が滞っていることが伝えられた。トランプとタヌスディビョの間にはこの時すでに緊張が生じていたかもしれないが、タヌスディビョはその2カ月後、トランプがビバリーヒルズに所有していた邸宅を1350万ドル(約15億円)で購入している。
さらに同年8月には、トランプの長男ドナルド・トランプ・ジュニアが、ジャカルタで行われたイベントで、バリ島とリドの両計画を大々的に宣伝し、「夢のプロジェクト」と呼んだ。英ロイター通信によると、タヌスディビョはこの時、記者らに対し、両施設は3年かけて開発され、MNCグループは17億ドル(約1900億円)を投入すると説明していた。
MNCグループ傘下のMNCランドは昨年9月、ツイッターへの投稿で、両プロジェクトで建設予定のトランプブランド施設を宣伝していたが、それ以降、「#TrumpLido」や「#TrumpBali」のハッシュタグはツイッター上で使われていない。ただ、リドシティーのウェブサイトには、今でもトランプ・インターナショナル・リゾートや、トランプ・ゴルフ・クラブ、トランプ・レジデンシズ・リドが記載されている。
しかし今年2月12日付の宣伝資料からはトランプの名が消えており、「ラクジュアリアス・インターナショナル・リゾート、ゴルフクラブ、レジデンシズ・リド」という名称に変わっていた。この資料にある「インターナショナル・ゴルフクラブ・リド」と「リド・レジデンシズ」が、かつてトランプの名前を冠したものであったことは、紹介文の内容からして明らかだ。
2020年から21年にかけてはトランプにとって厳しい出来事が続いた。2度にわたる弾劾裁判と新型コロナウイルスの流行、大統領選での敗北に加え、トランプの推定保有資産額は2020年9月までの1年間で約6億ドル(約650億円)減少した。さらにインドネシアでの「夢のプロジェクト」も失えば、痛い展開となるだろう。