しかし、先日行われたメディア向けのイベントで、出席した記者らは、あることに気づいた。同プロジェクトに2015年から関わってきたトランプ・オーガニゼーションの名前が、プレゼンや資料から消えていたのだ。これを最初に報じたのは日本経済新聞の英字紙ニッケイ・アジアだ。
中国系インドネシア人の実業家ハリー・タヌスディビョは、同プロジェクトの中のトランプ関連施設について、「当分の間は進まないだろう」と語った。大富豪でナショナリストのタヌスディビョは、まさに「インドネシアのトランプ」だ。
フォーブスは2017年の記事で、タヌスディビョをこう紹介している。「彼はトランプのように、不動産・メディア業界で多額の債務を生み出しつつ、推定11億ドル(約120億円)の富を築いた。100万人のフォロワーに向けてノンストップでツイートし、美人コンテストを開催し、リアリティー番組が大好きで、美人妻を持つ。タブロイド紙がトランプを『ザ・ドナルド』とファーストネームで呼ぶようになったのと同様、インドネシアメディアもタヌスディビョを『ハリー』と呼ぶ」
トランプとタヌスディビョの共通点は非常に多い。両者とも裕福な地元のビジネスマンの父に育てられ、どちらもウラジーミル・プーチンを公に称賛。2人とも脱税が繰り返し疑われている。政治的な野心も瓜二つだ。タヌスディビョは2014年の選挙でインドネシア副大統領に立候補したが落選し、自ら右派政党を設立した。
トランプは、大統領選の選挙活動を始めてから数カ月後の2015年8月、タヌスディビョとインドネシアの巨大高級リゾート2施設でのライセンス契約を結んだ。1つ目はバリ島の「六つ星」トランプタワーとゴルフコース、2つ目はリドシティーの一部である西ジャワ州の巨大リゾートとゴルフコースだ。どちらも、タヌスディビョの複合企業MNCグループが施設を所有・開発する一方で、トランプはブランディングを担当し、トランプ・ホテル・コレクションを通じて施設を管理する計画だった。