オスカー有力候補の「ミナリ」 今年も韓国系監督の作品が受賞か?

農業での成功を夢見て、アメリカに移住してきた韓国人一家の物語だ (c)2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.


リー・アイザック・チョン監督は、1978年にアメリカのコロラド州に生まれる。父親はアメリカの土地に夢を託して韓国から渡ってきた移民で、チョン監督自身もアーカンソー州の小さな農場で育つ。

名門のイェール大学で生物学を学んだ後、ユタ大学で映画学の修士号を取得。2007年、長編デビュー作である「Munyurangabo」がカンヌ国際映画祭で上映され、絶賛を浴びる。

最新作でもある「ミナリ」は、インディペンデント映画の登竜門であるサンダンス映画祭で観客賞と審査員特別賞を受賞したほか、世界各地の映画祭で高い評価を受け、直近のゴールデングローブ賞でも外国語映画賞に輝いた。

4月25日(現地時間)に授賞式が行われる第93回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など6部門でノミネートされているが、クロエ・ジャオ監督の「ノマドランド」(フランシス・マクドーマンド主演)と並んで、最高賞である作品賞で本命視されている。

音楽では、惜しくもBTSがグラミー賞を逃したが、映画では、全編に韓国語が散りばめられ、主要キャストも韓国系であるこの作品が、作品賞や監督賞を受賞するとなれば、昨年の「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)に続き、またまた韓国系の映画人の力を見せつけることになる。

また、作品賞や監督賞の有力な対抗馬である「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督も、中国・北京生まれの女性監督のため、どちらかの作品が受賞ともなれば、2年連続でアジア系の映画人が栄えある賞を受賞するということになる。

ちなみに、「ミナリ」のリー・アイザック・チョン監督は、日本の「君の名は。」のハリウッド製リメイクである「Your Name」でも監督と脚本を担当することが報じられている。チョン監督のリアルな演出が、「君の名は。」の実写作品でどのように生かされるのか、いまから楽しみであることに間違いはない。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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