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パーソルワークスデザイン 代表取締役社長 平林由義

パーソルグループ内の4社の事業が統合されて2018年に誕生したパーソルワークスデザイン。BPO(Business Process Outsourcing)サービスを基盤としながらも、代表取締役社長の平林由義が新たな取り組みとして鋭意推進しているのが、健康経営をサポートする提案型のヘルスケア事業だ。

革新的なサービスが生まれてきた経緯やパーソルワークスデザイン独自の強み、さらには平林自身の熱源について聞いた。



健康経営はコストではなく投資である


「生産性の向上」は、企業経営において喫緊の課題に位置付けられる。AIやDX、ジョブ型雇用といった切り札への注目度も高まっているが、より根本的・本質的に考えるなら、「ビジネスパーソンの健康保持・増進」から目を背けるわけにはいかない。まず、働く人が心身ともに壮健であってこその生産性だ。これからの時代、すべての企業が「健康経営」に着眼する必要があるのではないだろうか。

経済産業省では、「『健康経営』とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益 性等を高める投資であるという考えの下、従業員の健康管理を経営的な視点から考えて、戦略的に取り組むこと」と定義している。

すなわち、コストではなくて投資であるとポジティブに捉えるのが肝要だ。従業員の健康を守ることは、顧客からの信用につながる。従業員の健康と顧客からの信用によって収益性が高まると、投資家からの信用にもつながっていく。こうして健康と信用の好循環によって企業価値が高まれば、その恩恵は社会へと還元される。健康経営は、あらゆるステークホルダーと企業が良好な関係を結ぶための絶好の施策といえよう。日本が抱えている労働人口減少や医療費増加、健康寿命延伸といった課題に立ち向かうソリューションにもなる。企業の健康経営への意識が高まれば、健やかな日本社会の実現に近づくのである。


パーソルワークスデザイン 代表取締役社長 平林由義

平林は、まず自ら健康経営を実践した


この健康経営に資するサービスを展開しているのが、パーソルワークスデザインだ。パーソルグループに属する同社は、「BPOサービス」「ヘルプデスク/コールセンターサービス」「ヘルスケアサービス」「HRソリューションサービス」の4つを事業の柱とする。グループ内の4社の事業を統合し、シナジーを生み出すために経営の舵取りを担っているのが代表取締役社長の平林由義である。

これまでに得られたアウトソーシングについての知見を集約し、各事業における強みを有機的にリンクしながら、新たな事業モデルの創出を図っている。これから先の日本において、「ヘルスケアサービス」には特に多大なるグロースポテンシャルを見出しているという。

「パーソルワークスデザインが2018年10月に始動する以前から、ヘルスケア領域の事業に成長性を感じ、拡充に向けての準備を進めてきました。まず、私の故郷である広島県呉市の市長を通じて、『呉市モデル』と呼ばれている健康管理増進システムを学びました。この呉市の事業は、糖尿病性腎症重症化予防プログラムで新規透析患者を減少させるなどの確かな成果を挙げ、厚生労働省の推奨で全国の自治体に横展開されています。そして、『呉市モデル』の中核となる予防プログラムを開発した広島大学大学院医系科学研究科森山研究室を軸に、アクサ生命保険、私が代表取締役社長を務めていたハウコム(のちにパーソルワークスデザインに統合)が共同で、『企業の健康経営を実現する生活習慣病予防モデルの構築』について研究を行いました。その研究過程では広島県内の3社に加えて、ハウコムも『健康経営実践プログラム』に取り組み、企業の行動変容と生産性に関する効果測定を実施しました」

パーソルワークスデザインのヘルスケアサービスを充実させるために、平林は企業のトップとして、まず自らがヘルスケア事業の成功実例を学び、健康経営と真摯に向き合ってきたのだ。広島大学大学院の森山美知子教授、豊島礼子研究員がまとめた報告書には、当時のハウコムについて「健康経営に対する認識が変化する様子が観察できた」「最終的には健康経営を『コストではなく投資』『顧客の信頼を守るために社員の健康を積極的に守る必要がある』など『自分ごと化』し、前向きな認識に変化した」と評価する文章が並んでいる。ハウコムは、共同研究期間中に「健康経営優良法人 2018(大規模法人部門)」にも認定されている。

「健康経営に取り組む優良な法人を『見える化』し、社会的に評価される環境を整備したのが、経済産業省の設計で15年にスタートした健康経営優良法人認定制度です。本年度も3月4日に『健康経営優良法人 2021』が決定しました。今年は大規模法人部門に1801法人、中小規模法人部門に7934法人が認定されています。昨年は大規模法人部門が1481、中小規模法人部門が4723でしたので、健康経営に対する意識が年を重ねるごとに高まっていることが見て取れます」

ハウコムが認定された18年には、大規模法人部門が541、中小規模法人部門が776という数字だった。直近4年間における認定数の伸長率は、驚くべき右肩上がりだ。いま、地銀や信金などによる低利融資をはじめとして、健康経営優良法人にインセンティブを付与する自治体、銀行、機関が増えていることも健康経営に対する注目度の高さを示唆している。健康経営に取り組む優良な法人であることが社会に『見える化』すると、企業イメージの向上も期待できる。「働きやすい職場かどうか」に留意して企業研究に励んでいる新卒や中途の入社希望者にも、「健康経営優良法人の冠は輝かしいもの」と捉える意識が広まっている。実際、より優秀な人材が集まるというポジティブな変革が全国各地で起きているという。

今春、画期的なメンタルヘルスケアが始動


健康経営優良法人認定までのプロセスをよく知る平林が率いるパーソルワークスデザインでは、これから認定を得ようとする企業へのサポートも手厚い。そして健康経営を目指す企業にとって、さらなる変革を予感させるのは、現在、東京大学大学院教育学研究科と共同で開発中の、企業従業員の主体的な自己管理意識を醸成し、生産性の低下を予防するセルフモニタリングシステムを含む健康支援サービス「KATAruru(かたるる)」だ。

「業務の心理的負荷によって精神障害を発症し、労災認定されるケースが近年増加して社会問題になっています。認知行動療法などを研究する東京大学の下山研究室とパーソルワークスデザインは、3年前から共同研究を行ってきました。この『KATAruru』では、相談者と心理師の双方がアバターで対話します。アバターによってプライバシーが保護されるので相談時の心理的負担が下がり、より円滑で効果的・継続的な支援につながるのです。また、パソコンやタブレット、スマートフォンを介してオンラインで実施することにより、相談者も心理師も場所の制約から解放されるというメリットがあります」

19年に厚生労働省が発表した「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」の概況によると、「ストレスを実際に相談した相手(複数回答)」の1位は家族・友人で76.3%、2位は上司・同僚で69.7%という結果になっている。企業が選定した産業医は2.4%、産業医以外の医師は1.3%、保健師または看護師は2.2%、地域のかかりつけ医・主治医は3.8%だった。これらの数字は、メンタル不調を抱えたビジネスパーソンが医療のプロに相談することに対する心理的ハードルの高さを証明している。現場の上司・同僚によるメンタル不調の兆候管理や症状改善にも限界があるだろう。

「所属する組織とは関係なく悩みごとの相談が可能なこと、とにかく安心してメンタルヘルスケアに参加できること、そのケアがより効果的に持続していくこと。『KATAruru』は、メンタルヘルスケアにおける見えないバリアをなくしていきます。メンタルヘルス不調を未然に防止する『一次予防』、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う『二次予防』、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する『三次予防』のどの段階においても有効であると考えています」

健康経営を推進するにあたり、企業は「プレゼンティズム(健康の問題を抱えつつも仕事を行っている状態)」と「アブセンティズム(仕事を休業している状態)」の双方に対処する必要がある。ところが、メンタル不調によるプレゼンティズムは企業にとって把握が困難だ。そのため『KATAruru』では、就業している社員が小さなことでも相談できるよう、まずは気軽に専門家にアクセスすること、安心して自分を「語る」ことをコンセプトとしている。そして、相談者のプライバシーを十分に保護しながら、相談内容についてのレポートを企業に提出する。昨年からリモートワークが進行するなかで、ますます見えづらくなってきたプレゼンティズムを可視化するための貴重なデータとなるだろう。これにより、企業は自社のメンタルヘルス不調の発生要因を把握し、対処することが可能になるはずだ。




4つのサービスを生み出した平林の想いとは


メンタルヘルスに限らず、糖尿病やメタボリックシンドロームなどを呼び起こす生活習慣の改善も個人の自助努力だけでは難しい。そのため、パーソルワークスデザインは「特定保健指導サービス」を用意している。

「管理栄養士による食事支援、管理栄養士に加えて健康運動指導士がサポートする運動支援が主なプログラムになりますが、この『特定保健指導サービス』においてもパーソルワークスデザインは独自の強みを付加することに成功しました。『KATAruru』を共同開発した東京大学・下山教授の監修により、認知行動療法やストレスマネジメントに基づいた動機づけ支援もプログラムに加えているのです。食事や運動の改善をしたくても、なかなか行動できない。モチベーションが上がらない。生活習慣の改善が困難なのは、行動変容を促すスイッチを自分で押すのが難しいからです。心理師が対象者の気持ちに寄り添いながら、行動変容を促していきます」

この「特定保健指導サービス」は、すでに実績として13健康保険組合(指導対象者4300人)に導入されている。もちろん、パーソルワークスデザインは健康経営の基盤といえる「健康診断支援サービス」も展開していて、医療機関との契約から予約、精算、結果管理、労働基準監督署への報告データ作成までをワンストップで担っている。さらに、20年4月からは身体・心・食を総合的にサポートする健康プラットフォームとして「MeUP」を始動している。これは健康診断結果の確認、セルフストレスチェック実施、スマートフォンで食事の写真撮影・AIで摂取カロリー自動計算、体重・血圧・体温などバイタル情報の記録、歩数の記録・管理がアプリで簡単に行えるというものだ。

「健康診断支援サービス」「特定保健指導サービス」「健康プラットフォーム『MeUP』」「こころの健康 アバター支援サービス『KATAruru』」。これら4つのサービスを有機的に組み合わせていけば、健康経営の実現、さらには日本社会の健やかな未来像へもリーチできるに違いない。

パーソルワークスデザインの誕生から、わずかな期間でここまでサービスを拡充させてきた平林の熱源はどこにあるのだろうか。

「『人が幸せにならないとだめだ』というのが、私の経営哲学です。パーソルワークスデザインが掲げているビジョンは、『人と組織の成長創造インフラ』。人が組織・会社をつくり、その会社が社会に貢献しているわけですから、すべての基礎は人間であるといえます。その人間の幸せの根源を突き詰めると、健康に辿り着くのです。私自身、かつてガン宣告を受けたことがあります。早期発見だったので手術で助かったのですが、その際には健康の大切さが身に染みましたし、健康診断の重要さを(頭ではなく)心から理解することができました。経営者は『健康管理は自己責任』という認識を手放し、雇用者は『己の健康を自律的に守り抜く』という意識を保持する。そうした企業文化の定着こそ、私たちパーソルワークスデザインの使命と考え、これからも邁進していきます」



ひらばやし・よしのり◎1962年、広島県呉市生まれ。83年、株式会社コスモ・エイティに入社。経理部に籍を置きながら社内ITの推進責任者を経て、96年10月にヘルプデスク・ITサポートを手がけるハウコムを創業。18年10月、旧日本アイデックス、旧ハウコム、旧テンプスタッフ・ライフサポートの3社が統合して生まれたパーソルワークスデザインの代表取締役社長に就任。上記3社の事業に加えて、19年4月からはパーソルテンプスタッフのHRソリューション部門を統合。

▶パーソルワークスデザイン

Promoted by パーソルワークスデザイン text by Kiyoto Kuniryo│photographs by Shuji Goto│edit by Akio Takashiro

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