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nCino日本法人 代表取締役社長 野村逸紀

銀行業務最適化のプラットフォームを提供するnCino(エヌシーノ)が日本に進出した。米国発のクラウドソリューションは日本の銀行業界に何をもたらすのか。日本法人代表の野村逸紀に製品の特徴やビジョンについて話を聞いた。

nCinoはライブオーク銀行内のシステムとして開発されたソリューションだが、2011年にスピンアウトして法人化し、他の金融機関向けの提供を開始した。現在では世界で1,200以上の金融機関が利用している。同社は昨年、ナスダックに上場し、現在の時価総額は56億ドル(約6,000億円)を超える。

満を持して進出した日本で陣頭指揮を執るのが野村逸紀だ。野村は、米IT大手で流通業界を中心に基幹系システムなどのDX推進を支援してきた豊富な経験をもつ。日本法人では先日、オンラインイベント「nCino Summit」を開催したが、その反響は大きく、野村は日本市場に対して大きな手応えを感じている。

「約100行の金融機関から400人の方にご参加いただき、大変関心の高さを感じました。緊急性に差はあれど、多くの金融機関がDXへの課題を認識しています。思い描いていた成長曲線を早められそうな実感があります」

銀行業界ではDXが遅れている。しかし、これは日本に特有のことではなく、デジタル先進国とされる米国でも同様だという。伝統的な産業であるがために、変化を受け入れるのが難しいのだ。

日本ではまだ紙をベースにサービスを提供している金融機関が少なくないが、これからの時代、それでは生き残っていくのが難しいと野村は言う。

「個人では、紙の書類を使用する銀行に口座を開設する人が少なくなっていますが、法人でも同じ現象が起きつつあります。入り口がオンライン化されていないことは、機会損失につながるのです。しかし、入り口だけオンライン化しても、その先の部分がボトルネックになっていたら顧客満足を下げてしまうので、銀行内の業務プロセスもオンライン化する必要があります」

それを高度に実現するのがnCinoだ。顧客管理(CRM)から口座開設、融資、預金口座、ワークフロー、信用分析、電子文書管理など一連の銀行業務の一元管理を可能にする。



法人向け、個人向けと網羅性に優れたソリューションだが、それでいて導入のハードルは低い。元々セールスフォースのプラットフォームで動作させるために開発されたソリューションであるため、ユーザーインターフェース(UI)が直感的で、既存のセールスフォースに実装することが可能だ。また、クラウドサービスによる従量課金であるため、低リスクで初期投資できるのも魅力だ。

日本の銀行は従来から、外部のIT企業にシステム構築を依頼する座組でデジタル化を進めてきた。しかし、これからの時代、変化のスピードが求められる融資ビジネスのような事業領域では、nCinoのようなAPI連携や項目設定が容易で、行内で変更可能なシステム環境を整える必要がある。



「リレーションバンキング」機能強化を支援


低金利時代に加え少子高齢化の進展により、銀行業界は苦境に立たされているが、特に地方銀行は厳しい状況に置かれている。支店の数も行員の数も減らさざるをえないなかでサービスの質を維持するには、オンライン化による業務効率化が不可欠だ。

なかでも効率化による効果が期待できるのは融資業務だ。銀行では、新型コロナウイルスの感染拡大による影響でつなぎ融資の申請件数が急増しているが、そればかりに時間を取られていては、ほかのサービスで機会損失が生じかねない。融資業務にかかる時間や工数の削減に貢献するのがnCinoの融資ソリューションだ。自動審査機能により、設定した条件に適合する融資であれば、行内のプロセスなしに自動承認することが可能だ。

「理想は、つなぎ融資を銀行から然るべきタイミングで提案できることです。融資業務はできるだけ自動化し、人的資源は収益を上げられ付加価値の高い事業に振り分けていくべきです。イベントにご参加いただいた京都銀行様には安定した経営基盤がありますが、それでも危機感をおもちで、業務プロセスの改善によって創出された時間をコンサルティングに転換していこうと考えておられます」

すなわち、融資以外のサービスを継続的に提供する「リレーションバンキング」だ。多くの銀行が注力しているが、それについても、オンライン化がサービスの質を高める。顧客の視点に立ったコンサルティングを提供するためには、顧客情報の共有が必須だからだ。

「例えば融資の相談に来た方に対し、担当者が端末で会社の経営状況や貸付残高などを見ながら話すのと、『いま受けている融資はどれくらいですか?』といちから聞きながら進めるのとでは、顧客体験の差は歴然です。オンライン接点を設けることは、継続的に銀行とお客様をつなぎ、信頼関係を醸成するうえで非常に重要です。我々は、前者のような姿に変革していくためのツールを多数揃えています。テクノロジーによって、地方経済の活性化に貢献できると自負しています」

リレーションバンキングとしての機能強化を支援することで、地方経済の活性化につなげていこうというわけだ。その壮大な目的のために野村が重視しているのは、「チームづくり」だ。野村はこれまでのキャリアで、それが何よりも大切なことを痛感している。

野村が前職のIT企業に在籍していた際、2社が経営統合した。営業チームは一気に大所帯になったが、2社の企業文化がまるで違っていたために一体感がなく、思うように売り上げが伸びなかった。そこでチームの責任者だった野村は、組織改革に着手し、いいチームの条件を「他者の成功を喜べる状態」と定義した。出席率の悪かったチームミーティングへの参加を義務化し、成功体験や失敗体験を共有できる仕組みを整えた。それによって、組織は劇的に変化したのだった。

ゼロからのスタートであるnCino日本法人であれば、野村が理想とするチームを構築することができる。それが代表を引き受けた理由のひとつでもあった。

「nCinoのポートフォリオに合理性と必要性を感じたことが前提としてありますが、企業カルチャーを1からつくれることにも魅力を感じました。いいカルチャーがあれば、いい人材が集まります。それらが揃ってはじめて、お客様との信頼関係を築くことができるのです」

野村はIT業界経験者だけでなく、銀行出身者や融資の専門家など多様性に富んだ人材を招聘し、魅力溢れるチームを編成している。野村が理想とするのは、顧客はもちろん、DXによって業界自体が変革していくことだ。

「ITのエンジニアは、最新の技術を使用している業界に集まります。DXを通じて、銀行業界の価値が上がるような風土づくりやカルチャーづくりに微力ながら貢献していきたいです」

野村の情熱が地方経済の活性化と銀行業界の変革をもたらす。

nCino
https://www.ncino.co.jp




野村 逸紀(のむら・いつき)◎富士通で公共マーケットの営業に従事したのち、EMCジャパン(現Dell Technologies)に入社。2015年より流通サービス営業部長として大手顧客向けのマーケットを統括し、17年のDellとの統合後は、事業領域全体のマーケットの責任者として顧客のDXを推進してきた。20年、nCino日本法人の代表取締役社長に就任。

Promoted by nCino|text by Fumihiko Ohashi|photographs by Shuji Goto|edit by Akio Takashiro

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