仕事でも日常生活でも、予測不能なことは常に起こりえます。突然の製品需要の高まりやシステムの停止で、納品が遅れることもあるでしょう。サーバーやデータ・プラットフォームの容量を想定よりも早く使い果たす経験をした企業もあるかもしれません。
しかし2020年におけるビジネスでは、桁違いに予測不能な事態に直面しました。今回の混乱で、組み込み型のインテリジェンスの重要性が高まったのです。人々が毎日使うツールに機械学習が組み込まれるようになったことで、方向転換が必要になったとき、誰もが、データと分析情報をいつでも得られるようになりました。2020年は非常に混乱した年で、顧客行動に多くの変化があり、さらにその波及効果も相まって、多くの履歴データや予測は2021年にはまったく役に立たないものとなるかもしれません。そうなると、より多くの従業員が最新のデータを有効利用できるようにすることは、企業に課せられた責務となります。
10年ほど前であれば、組み込み型のインテリジェンスの概念はまるでSF小説のように思えたかもしれません。いまでは、分析による予測が可能になったことで、小売需要を予測したり、応答性の高いサプライチェーンの構築を支援したりという複雑な作業をテクノロジーが担うようになるとされています。しかし多くの場合、ハードウェアの限界、古いアーキテクチャ・モデル、低速なクエリ、信頼性の低いデータがその足かせになっていました。
今日、企業の意思決定が、従来のツールからクラウドを活用したデータインテリジェンス・サービスに移行したことで、その概念が現実のものとなっています。複雑な分析タスクを実行し、有益で信頼できる情報をこれまでにない速さで得ることが可能になりました。その優れたスピードと規模によって、企業はまったく新しいプロジェクトに取り組み、新しい機能や製品を短期間でリリースできるようになったのです。また、API はよりインテリジェントになり、サイロ化されたソリューションをつなげることも容易になりました。このテクノロジーを利用すれば、業界を問わず、企業は顧客が本当に必要としているものを把握できます。
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絶えず変化する顧客のニーズに組み込み型の機械学習で応える
組み込み型の分析の実作業導入は進化を続けており、この1年で多くの興味深いユースケースが見られました。パンデミックと公衆衛生のガイドラインが見直され、多くの企業は、顧客との主なやり取りを対面にするかデジタルチャネル経由にするかを、月単位で模索していました。しかし、両方の手段を利用できる場合でも、顧客の行動変化がどのような結果をもたらすかは誰にも明確にはわかりませんでした。
たとえば、患者とのエンゲージメント・プラットフォームであるForce Therapeuticsでは、パンデミックによって、仮想のケア・プラットフォーム上のアクティビティが毎日140%以上増加しました。膨大なデータが殺到する中、その情報を人間の手で収集、整理し、分析情報を引き出していたら、医療従事者へタイムリーに提供することは不可能に近かったでしょう。
Force Therapeuticsは、適切なタイミングと方法で必要なケアを提供するため、幅広いデータに基づいて患者のニーズを把握できる機械学習ソリューションを求めていました。同社は組み込み型の分析プラットフォームを使って、リモートで術後の患者の経過を観察したり、患者からの質問に答えたり、懸念事項をトリアージできるアプリケーションを構築しました。このプラットフォームを活用することで、数値の急変や異常をチェックし、来院が必要な患者を特定できるようになりました。
こうした混乱の中で明らかになったのは、チームワークが不可欠で
あること、そして円滑なチームワークで仕事を遂行するにはデータ
ドリブンで適切なツールが必要であるということでした。
同様に、宅配が消費者の日常生活でさらに大きな役割を担うようになりました。結果、企業側には、悪天候や上流サプライチェーンの混乱など、遅配の原因となりうる変化にも速やかに対応しなくてはならないプレッシャーがのしかかります。こうした混乱の中で明らかになったのは、チームワークが不可欠であること、そして円滑なチームワークにはデータドリブンで適切なツールが必要ということでした。
一般公開データを活用して、データから行動につながるインサイトを生み出すプロセスを加速するGoogle Cloudのお客様に、その例を垣間見ることができます。一部の小売業者は、Google Cloud一般公開データセットプログラムを通じて、NOAAのGlobal Surface Summary of the Day(GSOD)データセットとSevere Weather Data Inventoryデータセットを活用しています。これらのデータセットで天候を把握し、サプライチェーンをルート変更して混乱を防ぎ、店舗在庫のニーズを予測して、自然災害から復旧するコミュニティをサポートするのです。
複雑さを伴わない機械学習の実装
組み込み型の機械学習(ML)の概念は長年にわたって注目を集めていますが、多くのユースケースでは、現行のツールがその勢いに追いついていないのが実情です。古いデータベース・アーキテクチャに根付く多くのビジネス・インテリジェンスツールで、分析情報を提供するには、相当なエンジニアリング作業が必要です。これらのツールはクエリ処理が低速で、その出力は一貫性や精度に欠けることも珍しくありません。ここで課題の一つとなるのは、MLパイプライン構築の困難さです。通常、データベースやデータウェアハウス内にあるデータは、インテリジェンス・プラットフォームへ移動する必要があります。そうすることでモデルのトレーニングを行い、モデルをビジネス・ワークフローにデプロイして統合します。
しかし、BigQueryなどの最新のデータウェアハウスでは、データを移動せずにウェアハウス内でモデルをトレーニングできます。モデルが作成されると、シンプルなSQLを使用してビジネスプロセスに適用し、統合できます。MLをエンタープライズ・プロセスに組み込む際にも、こうした最新アプローチによって導入ハードルが大幅に下がります。さらには、データニーズの絶えまない進化や、エンジニアリング・リソースを過度に消費せずに迅速に反復処理を行う必要を想定したうえで、最新のデータニーズに対応できるツールが作成されています。最新のBIやデータアプリケーション向けのGoogle CloudプラットフォームであるLookerもその一つです。
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Commonwealth Care Alliance(CCA)では、データのボトルネック解消と、データの混乱を軽減するためにLookerを実装していました。コミュニティを基盤とするこの非営利の医療機関は、パンデミックの発生を受けて、Lookerツールを利用して患者により良いサービスを提供する方向に舵を切りました。CCAは、BigQueryとLookerを使用して多数のデータソースを組み合わせ、リスクを評価する予測モデルを作成し、そのモデルを臨床医に配布しました。救急対応チームでは、リスクが高すぎて来院が困難な患者を特定し、在宅ケアのソリューションを提供するために、分析情報を活用できるようになりました。
機敏性は、たった1回の混乱に対する1度限りの対抗手段ではありま
せん。組織が競争力を維持しながら、将来の混乱を防御するために
手にいれるべき標準的な手段なのです。
同じような機能がSoundCommerceのような企業でも活用されています。SoundCommerceのデータ・プラットフォームは、BigQueryとLookerを活用しており、設定なしですぐに使用できます。Constellation Brands、Eddie Bauer、FTD/ProFlowersなどの小売業者は、SoundCommerceのデータ・プラットフォームを通じてさまざまなソースから小売データを収集し、小売業にとって特に重要な指標と関係性に即したモデルを構築しています。これにより、毎月数百時間かかっていた手動でのレポート作成時間を短縮し、プラットフォームのライセンスコストを約75%も削減しました。また、2020年のような先行き不透明な状況下であっても、SoundCommerceを使用したブランドは、マーケティングや業務におけるリアルタイムの意思決定や予測的な意思決定ができ、重要な小売KPI(貢献利益や、顧客のライフタイムバリューであるCLVなど)の整合性をとれたのは、特筆すべきことでしょう。
私たちは常に進歩するための機敏性を備え、いざというときに迅速でインテリジェントな方向転換を行えるよう体制を整えておくことで、予測不能な事態に備えることができます。2020年は、あらゆる意味で変革の年になりました。機敏性は、たった1回の混乱に対する1度限りの対抗手段ではありません。組織が競争力を維持しながら、将来の混乱を防御するために手にいれるべき標準的な手段なのです。
BigQueryで実行中のBIワークロードを高速化する「ワンタッチボタン」をお求めの方は、BIエンジンに関する、Google Cloud公式ブログのこちらの投稿をご覧ください。
Debanjan Saha ◎Google Cloudのデータ分析担当ゼネラルマネージャー。Google Cloudにおける分析サービスの戦略と実行を担当するリーダーである。Google入社以前は、Amazon Web ServicesでAmazon AuroraとRDS担当のバイスプレジデントを務め上げ、さらに以前には、IBMとTelliumで複数の経営や技術部門のリーダーを歴任した。光通信ネットワークのパイオニアTelliumを、初期のスタートアップ企業の段階から公開企業にまで育て上げた実績も持つ。DebanjanはIEEEのフェローであり、ACMの特別栄誉科学者(Distinguished Scientist)にも選ばれている。書籍に加え、50件の特許出願を行い、各種受賞歴のある論文を含む多数の技術記事を執筆し、インターネット標準の策定にも携わっている。メリーランド大学で科学修士号と博士号を、インド工科大学で科学技術学士号を取得。専門はすべてコンピュータサイエンスで、2019年には、Business Insiderにより、ビジネスを変革した技術担当エグゼクティブ上位10名に選ばれた。
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