ビジネス

2021.03.17

「働く」にフォーカス。単独代表でファンド設立

写真=帆足宗洋(AVGVST)

「戦局を変えるのは矢です。いまの流れを変えて、未来を切り開く。そんな矢のようなスタートアップの伴走者になりたいんです」。矢澤麻里子が立ち上げたのがシード期のスタートアップ投資に特化した「YazawaVentures」。できたばかりの名刺には、二本の矢尻が組み合わさった会社ロゴが赤で印字されている。

「働く」にフォーカスし、企業や組織の働く環境の構造変革や、多様な個人の働き方の変革を目指す会社や、ヘルスケアや教育分野の会社などに1000〜1500万円を投資。第1号ファンドは、2021年5月のクローズまで募集している。

矢澤は3姉妹の長女。紙の卸売業を営む父の働く姿を見て育った。幼いころからビジネスに興味があったが、矢澤が22歳の時、「女には継がせられない」と父は会社を畳んだ。「自分が本当にやりたい仕事は何か、と考えるようになり、それを模索してきました」。

転職して、まだまだ女性投資家が少なかった日本のベンチャー・キャピタル(VC)業界に加わったのは7年前。VCのサムライインキュベートで、洋服のサブスクリプションサービスを展開するエアークローゼットや、保育士を支援するキッズカラーなどシード期のスタートアップ支援に夢中になった。

「何もないところから『絶対にこの未来は来る』と信じて、大きな未来を描く起業はロマンチックです。でもその実現は困難で、起業家には支援が必要です。投資して、応援して一緒に未来をつくることが私のやりたいことだと気づきました」

その後、アメリカの大手起業支援のプラグ・アンド・プレイ日本支社の設立に参画。大企業とスタートアップをつなぐオープンイノベーションのプラットフォームづくりに従事し、150社以上のスタートアップの採択・支援に関わった。

19年に出産し1年のブランクを経て、女性の単独VC代表として独立した。「起業家は孤独だからこそ、溢れ出るエネルギーがある。それをもっと同じ目線で感じたいです」


やざわ・まりこ◎1983年、東京都生まれ。ニューヨーク州立大学で刑事制度などを専攻。IT関係の企業でコンサルタントなどを経て、2013年にサムライインキュベート、2017年に米起業支援大手のプラグ・アンド・プレイ日本支社の設立に参画。COOとしてプラットフォーム立ち上げに従事。

文=成相通子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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