妊活用アプリも。ベビーテック 19億ドル市場の可能性

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ミレニアル世代が親になって──


赤ちゃんが少し成長すると、今度はエデュテイメントが待っている。エデュテイメントはeducation(教育)にentertainment(楽しみ)を取り入れることで、子どもたちが興味を持って学んでくれるようにすることを指す。新しい教育の形であり、新しい遊びや玩具の形でもあると言えるかもしれない。ロボットやAIベースの教育プラットフォームなど、ベビーテック市場ではたくさんのエデュテインメントが提供されている。

例えば、中国では教育ロボットに熱い視線が向けられており、リサーチ機関の前瞻産業研究院によるとその市場規模は2025年に3000億元(約4兆5000億円)に達するという。なかでも、人気を集めているのが悟宝(woobo)社の教育ロボットWooboだ。音声認識を備えたぬいぐるみロボットで、子どもの質問に的確に答えることができる上に、子どもの質問に関連した知識なども教えてくれる。気持ちを表現したり、歌を歌ったり、歯磨きなどの日々のルーティンを楽しく習慣づけしてくれる、友達と先生を兼ねるような存在だ。

アメリカではベビーブーマー世代を抜いてミレニアル世代が最も人口の多い世代となり、全米小売業協会(National Retail Federation)によるといまやアメリカの赤ちゃんの50%はミレニアル世代の親のもとに生まれているという。この世代は、生まれたときからスマホやPCが身近なものだったデジタルネイティブ世代とも重複している。日常的にデジタルテクノロジーを使っていてテックリテラシーの高いミレニアル世代が親になったことで、育児にも積極的にデジタルテクノロジーが取り入れられるようになったのだ。

記述の通り、働く母親が増えていることもベビーテック製品やサービスへの需要を高めている。ドイツ連邦統計局によると、未成年者の子どもをもつ女性が働く割合は2008年の65.4%以降毎年増加しており、73.9%まで増加したあとも上昇を続けているという。また、厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査の概況」によると、日本でも児童のいる世帯の母親のうち72.4%が仕事をしている。仕事と育児を両立させるためには、夫婦間の分担や家族、勤務先、行政などのサポートが重要になるが、それでもなお両親にかかる負担は大きい。そのため、ベビーテックのサポートが必要となるのだ。

ヨーロッパでは高収入家庭ほど子だくさん?


従来、人口統計学者たちは高収入の家族は子どもが少ない傾向にあるとしてきた。一般的にも、収入の少ない家庭のほうが子どもが多いと考えられがちである。しかし、ヨーロッパではこの相関関係が成り立たなくなっているという。ドイツにあるマックス・プランク人口研究所とベルリン自由大学の研究者たちは、所得の高いヨーロッパの地域は出生率が高い可能性が高いとしている。

また、アメリカの赤ちゃんの50%がミレニアル世代の親のもとに生まれているというのは前述の通りだ。現在アメリカではミレニアル世代の世帯収入は全国平均より1万ドル高いと言われているため、やはり子どもを持つ高収入の家庭が増えているといえるだろう。収入の高い家庭は、必要だと思えばベビーテック製品やサービスを購入する余裕があり、ベビーテック市場への需要を高めている。

ベビーテックは「子育てを効率的に行ないたい」「子どもや家族とこのように過ごしたい」「COVID-19の影響が残るうちは、なるべく病院に出向かずに健康管理をしたい」など、その時々の需要に応えて市場を広げてきた。急速に成長しすぎた反動がくる可能性はあるが、これからもより一層成長していくべく次々に新しい製品、サービス、仕掛けが生まれてくると期待したい。

文=アステル 編集=石井節子

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