「手づくりは機械生産より高品質」は、過去の話になりつつある

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とはいえ、手づくりの製品は、依然として多くの分野で品質の証となっている。つまり、「手づくりは機械生産より優れているのか?」という問いの答えは、生産プロセスや業界によって異なる。さらに各業界のなかでも、従事しているさまざまな企業の戦略的アプローチによって異なるのだ。

ただし、各生産プロセスにおいて、単なるエピソード的体験や伝統から感じられている「手づくりの利点」と、実際の利点を区別することが重要だ。私たちは、次のようなパラドックスに意識的に取り組むことになるかもしれない。ロボットに手作業の製造工程を模倣させ、品質を損なうことなく、「手づくり」の特徴を生み出すイレギュラー要因を意図的に組み込むことはできるだろうか?

「人がつくった」あるいは「ハンドメイド」と、「ロボットによる製造」を対比する際には注意が必要だ。機械学習が実用化されたことにより、現代のロボットはもはや、単なる反復作業だけを担う存在ではなくなった。適切にラベル付けされた大量のデータフィードがあれば、最高レベルの人間をも上回る成果を生み出せる存在なのだ。

このことは、ある動画広告が端的に表している。世界トップクラスの卓球選手であるティモ・ボルが、産業ロボットメーカーのKUKA社が制作した卓球ロボットに手も足も出ない状態がとらえられている。2014年に制作された動画広告だが、筆者は今でもこの例を自分の授業で紹介している。

将来的には、これまで手作業の方が優れているとされてきた業界、たとえば洋服の仕立てにおいて、機械が顧客の体を正確に測定し、データを型紙作成や仕立てのプロセスに送り込むようになるだろう。そして、優秀な仕立て屋が手がけてきたような、顧客の体の難点を隠す完璧な仕上がりのスーツが、記録的な速さでつくられるようになるだろう。

こうしたプロセスが極限まで最適化されれば、機械がつくるスーツは、従来の仕立て屋がつくるスーツよりも高品質になるだろう。さらに、このアプローチが追求されていけば、大幅に安価になる可能性がある。3度の試着と、チョークを使った計測を行うハンドメイドのスーツは今後も、高品質を意味するものであり続けられるだろうか?

一部の業界では、ロボットによる製造の継続的改善プロセスがすでに導入されている。ほかの業界では、ロボットによる製造はかなり珍しく、「手づくりの製品はロボットによる製品よりも優れている」という含意がこれからも続きそうだ。とはいえ、そろそろ固定観念を修正すべき時だろう。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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