「手づくりは機械生産より高品質」は、過去の話になりつつある

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テクノロジーやAIについて議論するメディア「YouTheData」に、「手づくりは品質を示す言葉になったのだろうか」と題するエッセイが2021年2月28日付けで掲載された。このなかでエッセイの著者は、自分が見かけた語学コースの広告について紹介しているのだが、その広告は、この語学コースが「アルゴリズムやコンピュータープログラム」ではなく、「100人以上の言語学者や語学のエキスパート」が設計したと謳っていた。

エッセイの著者は、次のような疑問を提示している。人間の手でつくられたものは今後、機械によってつくられたものとは別格と考えられるようになり、後者は低品質とみなされるようになるのだろうか、という問いかけだ。

語学学習はとりわけ興味深い分野だ。というのも、すでに現在の技術で、人間がまったく介入せずに、アルゴリズムを使って学習プログラムを最適化させることが可能だからだ。それどころかテクノロジーによって、はるかに高度なパーソナライズが可能になる。どんなにたくさんの言語学者を集めても、学習者の一人ひとりが個人指導を受けられるわけではないが、アルゴリズムにはそれができる。

オートメーションの新基準を打ち立てつつある「インダストリー4.0」の原則に向き合えば、「人間がつくったものの方が品質面で優れている」という信念は、もろくも崩れ去る。歴史を振り返っても、オートメーションの進歩は、常に効率と品質を改善し、エラーを減らしてきた。

オートメーションを、大量生産や低コスト化と関連づけるのは誤りだ。確かに一般的に言えば、固定の生産コストを大量の製品ユニットに分散させると価格が低下するという傾向は存在し、過去にはこれが当てはまった。オートメーションや大量生産は、人間が手工業的につくりだすものと比べて、安価だが、概して低品質な製品を生み出してきた。

逆説的だが、かつてはこの事実が、中国や東南アジアでの製造業の隆盛につながった。これらの国々では単位労働コストが低く、オートメーションの進行が遅れていた。どんな製品であれ、人間の手でつくることがもっとも安価な方法だったのだ。

このような人間が携わる生産ラインは、皮肉にも「非人間的」とみなされてきた。労働者がきわめて反復的な作業に従事するためだ。また、低価格製品を生み出してきたが、製品の質は不安定だった。長時間にわたる重労働の間じゅう、個々の労働者のパフォーマンスを安定させることは困難であるためだ。

こうした状況は、生産ラインに機械学習が導入されたことで劇的に変わった。最大の変化が起こったのは中国だ。世界最多の生産ロボットが急速に導入され、手作業での生産が競争力を失った結果、数十万人の労働者が職を失った。

そうした労働者は、職業教育を受けて別の仕事に回ることになった。こうした野心的な改革の結果は知ってのとおりで、生産性が向上し、品質が改善し、不良品が激減した。ロボット化により、信頼のおける欠陥のない生産プロセスが確立されただけでなく、より徹底した品質管理が可能になったのだ。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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