CDCによる今回の発表は、公衆衛生当局が繰り返し、各州はマスクの着用義務化や営業規制などの予防措置を継続して実施すべきだと警告するなかで行われた。米国では新型コロナウイルスの新規感染者が大幅に減少していたが、このところは変異株の広がりを受け、横ばいに転じている。
ワレンスキー所長は3月5日、「マスクの着用を止めて、以前のような日常に戻ることが好ましいのはわかっているが、今はまだその段階には達していない」と述べた。にもかかわらず、多くの州がマスクの着用義務を緩和し始めている。テキサスとミシシッピの両州は3月2日、マスクの着用義務と、新型コロナウイルス関連の営業規制すべての解除を発表した。この動きについて、多くの公衆衛生専門家が非難したほか、米大統領ジョー・バイデンは「ネアンデルタール人的な(野蛮な)考えだ」と批判した。
民主党が率いる州でも予防措置が緩和されている。コネチカット州のネッド・ラモント知事は3月4日、州内に出されていた飲食店やジムに対する収容人数制限をすべて解除すると発表した。
ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策本部上級顧問アンディ・スラビット(Andy Slavitt)は3月5日の記者会見で、ワクチン接種が普及してきているとはいえ、新型コロナウイルスの感染者数は近く増加に転じる可能性があると警告した。「ワクチン接種は順調に進んでいるが、懸念すべき兆候も見えている」と同氏は語った。
また、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長を務めるアンソニー・ファウチ博士は、欧州諸国でも、感染者数が横ばいをたどったのちに増加するという軌道を描いていると指摘した。米国ではこのところ、1日の新規感染者数が6万人から7万人で推移していると同氏は述べたうえで、「こうした感染者数が長いあいだ横ばいでとどまっているということは、再度の急増リスクがあることを、ほぼ例外なく意味している」と警告した。