ヘンリー王子とメーガン妃は、進むべき道をはっきりと定めたうえで自立しようとしている。だからこそ、王室側が確実に仕向けてくるであろう非難の猛攻撃に先んじてウィンフリーとのインタビューを放送することが、アーチウェル設立にとってきわめて重要だった。そして今、何が起ころうとも、ヘンリー王子とメーガン妃の言い分は世界の知るところとなった。
新たにビジネスを立ち上げるときには、タイミングが最重要ポイントのひとつだ。その点、ヘンリー王子とメーガン妃はまさに達人である。2人は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けたロックダウン中に居場所を確保すると(米映画プロデューサーで劇作家タイラー・ペリーが所有するカリフォルニア州の邸宅に数カ月にわたって滞在していた)、英王室を相手に延々と続く交渉に臨みながら、ブランド「アーチウェル」のデザインやストーリーを構想していたようだ。
そうして今、世界各地でロックダウンの解除が始まるとともに、2人の新ブランドは、新たなライフスタイル・リーダーを必要としているであろう時代のプレーヤーになる用意を整えてスタートした。
ウィンフリーが2人の邸宅を訪ね、裏庭に設置された囲いで飼われている鶏たちと一緒に映っているシーンは、偶然撮影されたものではない。2人は、世界を飛び回る華やかな暮らしを送る一方で、飼っている鶏が産み落とした卵を集めている。そうした姿を見せることで2人は、健康や、人間本来の暮らしに高い関心を寄せる世界の仲間入りをしようとしているのかもしれない。
起業を目指す人たちが、王室を離脱したヘンリー王子とメーガン妃から学ぶべきことはほかにもある。新たな試みに着手するときに、場所を改めることがどんなに有益かという点だ。2人が手放した生活の基盤や資産を再現するのは、不可能とまでは言わないがかなり困難だ。しかし、新たに獲得した選択の自由や、自立の感覚、自ら獲得する経済力は、手放したものを補って余りあるだろう。
ヘンリー王子とメーガン妃は、より理想的な結びつきをかたちづくるために、独立を宣言したと言ってもいいかもしれない。スタートアップ企業の物語としても、聞いたことがあるストーリーのはずだ。