プラごみでできた島を「国」に? 国連への加盟申請で訴えたかったこと

Anton Petrus / Getty Images


「IDEA」と「EXECUTION」の掛け算で

実は、ここまでが、広告コミュニケーションなどで言うところの「IDEA」である。

一般的には、広告施策の肝となるこうしたアイディアを、英語圏では「Big Idea」という。この場合の「Big」とは、「施策全般に影響を及ぼすような大きな」という意味合いだと思う。

しかし、カタカナ英語で「ビッグアイディア」と言うと、そうした意味合いよりは、「いままで一度も見たこともない」とか「突飛な」というようなニュアンスに取られがちなので、筆者は、本来の意味でのBig Ideaとして、「IDEA」を「コアアイディア」と呼ぶことが多い。

広告コミュニケーションやマーケティングコミュニケーションの事例で重要なのは、この「IDEA(コアアイディア)」と「EXECUTION」の掛け算だと言われている。EXECUTIIONとは「実施」とか「実行」といった意味合いだ。

このトラッシュアイルズの事例で言うと、ごみの集まる海の地域を国と捉えて→国民を募るという形で一種の署名運動を行い→国連に加盟申請まで行った。ここまでがIDEAだ。


Trash Isles - PLASTIC OCEAN - Cannes Lions 2018より

その後、国連の加盟申請の条件にあるのだが、国旗をつくり、紙幣をつくり、パスポートまでつくる。さらに元アメリカ副大統領のアル・ゴア、環境保全派作家として有名なサー・デイビッド・アッテンボローや、歌手のファレル・ウィリアムズ、俳優のクリス・ヘムズワースら著名人の協力を取り付け、訴求力を増すことにも成功した。

これらが、トラッシュアイルズを国と見立てたことにリアリティを持たせるために行ったEXECUTIONということになる。

トラッシュアイルズの事例は、IDEAとEXECUTIONがきちんと上手く廻った優秀な事例だと言えるだろう。

このことは、何も広告コミュニケ―ションに限ったことではない。読者の皆さんも自身の課題解決を試みる際、IDEAとEXECUTIONの両方で努力を怠りなく進めることに配慮いただければ、成果の挙がる確率はかなり増すことだろう。

連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま
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文=佐藤達郎

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