ヴァギナはタブーか? 「エコフェミニズム」に自由と権利はあるか?

2021年1月初旬、ブラジルの芸術公園ウジナ・デ・アルテに出現した立体造形作品『Diva(歌姫)』

2021年1月初旬、ブラジルの芸術公園ウジナ・デ・アルテに出現した立体造形作品をめぐり、SNSで炎上騒ぎが起きた。保守的な人々が、この作品を手掛けたジュリアナ・ノタリを「下品で反道徳的」と糾弾したのだ。

だがこの作品は同時に、アーティストであり活動家、エコフェミニストのレラ・ノルディックが、女性器のイメージがいかにして女性の権利闘争の旗印となり、エコロジーがこれにどう関わっているのかを明らかにするきっかけともなった。


嵐のごとき絶賛と憤怒が意味するもの


長さ23メートル、幅16メートル、深さ6メートル。ジュリアナ・ノタリがレジンとコンクリートで創作した巨大な立体造形作品のサイズである。おそらく人体で最もタブー視される部位を模したこの作品が、ブラジルの現代美術館の敷地内にある公園で披露されると、嵐のごとき絶賛と激しい憤怒を同時に巻き起こした。

多くの人々は、このような場所で、まさに文字どおりの「自然の恵み」に対峙することなど思ってもみなかった。そのため、突然このランドアート(自然由来の素材を使い、自然の中で 制作する美術のジャンル、または作品)を目にすると、道徳的にどう考えてよいのかわからなくなり、ただちにこれを嫌悪して「わいせつな」作品だと罵った。

性器や身体全体(特に女性の場合)は時にわいせつで、許されない、恥ずべき、いやらしいものであり、見るに値するものではないとされる。このような考え方は、幼少期から多くの人々の間で浸透しているステレオタイプに根差している。公園で巨大な外陰部の立体造形物を突然目にしたら、たいていの人々が侮辱されたと感じるのはこのためである。

多くの人々が、性的なイメージを表現した作品を、現代美術のある種の後退もしくは「モラル低下」の結果とすら考える。昔は真の意味でのアーティストが存在し、名作を後世に残したものだが、現代のアーティストは身近なもので済ませようとしている、女性器が露出しているなんてとんでもない! と叫ぶ。

しかし一方で、アートやアクティビズム界では、これまで数十年間にわたり、外陰部のイメージが女性解放運動のシンボルとして、男女平等、機会均等を求めるイメージとして用いられてきた。

では性器の描写は、どうやって我々の権利や自由にまつわるタブーやステレオタイプに結び付いてきたのか。
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翻訳=上林香織 編集=石井節子

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