ヴァギナはタブーか? 「エコフェミニズム」に自由と権利はあるか?

2021年1月初旬、ブラジルの芸術公園ウジナ・デ・アルテに出現した立体造形作品『Diva(歌姫)』


世界中の何百万人もの少女たちが月経、避妊に関する基本情報を得ることもできず、近親者にも自分の身体に関する質問や、暴力を受けた経験、健康上の問題ですら話すことができずにいる。これもまた、女性の肉体性がタブー視され、肉体性にまつわることが蔑まれてきたためだ。

これと対照的に、プライベートゾーンに関してオープンな会話を行うことで、少なくとも性暴力のリスクを下げることができるとする研究もある。子供たちが正しい性器の名称を知り、生理現象や性的経験について恐れることなく話題にすることができれば、暴力に直面した場合にも怯えずに大人に伝えられるだろう。


ギュスターヴ・クールベ『世界の起源』(フランシス・モリ / AP通信 / TASS通信)

女性の身体のあらゆる部位を問題なく口にできて、それらのイメージが当たり前になることは、スティグマやタブーをなくすために必要であり、結果的に、最も脆弱な少女や女性のリスクを減らすことになる。特に、実際の肉体の見た目は実に多様であることを知ることにもつながる。

アムステルダムのイラストレーター、ヒルデ・アタランタは2016年に、「ザ・ヴァルヴァ・ギャラリー(外陰部のギャラリーの意)」という、アートと教育を融合させたプロジェクトを立ち上げた。イラストを通じて、「肉体はみんな違って当然で、恥じることはない」と示したのである。この取り組みは、自分の身体を受け入れるストーリーや個人的な経験を共有するプラットフォームとなった。同名の書籍ものちに発表された。世界中から650を超える女性器に関する描写を集め、教育的コンテンツや解剖学的なイラストなど、役立つ情報をまとめた1冊だ。

今日のロシアでは、適切な性教育は、個人の専門家やアクティビスト、NGOの肩に掛かっている。彼らが、安全な性交渉、性的同意の重要性、性的快楽、月経衛生、HIV、STD予防などに関する記事の執筆、SNSへの投稿、さらに動画撮影、啓蒙パンフレットの配布などの活動を実施している。しかし同時に、これらのコンテンツ制作者はいじめや脅迫、ハラスメントの標的にもなっているのだ。

フェイスブック上の詩、『私のヴァギナ』には──


フェミニズム運動がロシアやその他の国々で広まるにつれて、これに敵対する人も増えてきた。女性やその他の社会的弱者の声が高まるほど、現状維持を支持して既得権を守りたい層、つまりすべての人々の平等な権利や機会均等に反対する人の声も大きくなってくる。

階層制は、生活のあらゆる分野のあらゆる集団に浸透している。ヒューマニズムの価値観を共有していてもそれは変わらない。たとえば、ロシア語文学のコミュニティが最近、『My vagina(私の膣)』という詩に対して反応する場面があった。この詩は、ユリア・ツヴェトコワを支持すべく、フェミニストで詩人のガリーナ・ルィムブーが書いたものだ。フェイスブックでこの詩が発表されると暴力的な反応が起こった。コメント、メンション、シェアは数百件に上り、時には「この言葉(膣)」が「塩素やホルマリンの臭い」に照らされるとする極端な批判も見られた。

ガリーナ・ルィムブーはこれに応じて、新たな詩『Great Russian Literature(偉大なるロシア文学よ)』を発表し、ロシア語文学の伝統が性差別主義的であり、女性の生理現象を蔑視していると非難した。
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翻訳=上林香織 編集=石井節子

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