経済・社会

2021.04.17 11:00

ヴァギナはタブーか? 「エコフェミニズム」に自由と権利はあるか?


ボディポジティブか、ポルノ配信か


イヴ・エンスラーの戯曲『ヴァギナ・モノローグス』は、暴力の被害にあった何百人もの女性のインタビューに基づいて執筆され、1996年の初演以来、多数の国の劇場で上演が続いている。

これはフェミニストアートによって女性が主観性を取り戻すことに成功したひとつの好例だ。過去に受けた暴力、月経、出産、性的快感を可視化し、社会にとって都合のよい「死角」から引きずり出した。さらに、女性に対し、各自が置かれている状況を見る機会と、これらの体験は自分ひとりのものではないのだと知る機会を与えたのである。

イヴ・エンスラーは2020年、ロシアのアーティスト兼LGBTアクティビストであるユリア・ツヴェトコワを支持すると表明した。ユリアは、ロシアのSNS、フコンタクテ(VKontakte)アカウントに、外陰部を描いたボディポジティブのイラストや抽象画を投稿していたが、それらがポルノ配信に当たると見なされ、起訴された。ユリア・ツヴェトコに対する刑事訴追は、2年目に突入している。

ユリア・ツヴェトコワの訴訟は、誰かが身体の権利回復を試みたり、女性に自己受容を促したりすると、いかに家父長制度を刺激することになるのかを示す一例である。

ツヴェトコ以外にも何千人ものフコンタクテユーザーが、ポルノ製品や性差別主義的な広告、女性の性的なイメージなどを公開している。しかし彼らが、ボディポジティブのアート的、啓蒙的主張をしているとして、怒りや妨害にさらされることはない。なぜなら彼らは、社会が望まない方向では女性の肉体を表現していないからだ。つまり、「女性の身体がひとりひとり違うこと、完全なものではなく自由で主観性を有していること」については表現していないのである。

性暴力のリスクを下げる「女性器についての会話」


女性器の描写は、月経、女性の性的快感、母性、中絶する権利などの話題について対話するきっかけになる。これらのテーマや、付随する、抽象、写実に関わらない視覚表現が当たり前になることは、文化的にも性教育においても重要だ。そこには何百万人もの女性の安全と健康が関係していることも忘れてはならない。

女性のセクシュアリティに関する学術研究で生じた不条理や、女性の身体機能について知りたければ、『禁断の果実―女性の身体と性のタブー』という素晴らしい漫画を一読してほしい。スウェーデンの作家兼イラストレーターであるリーヴ・ストロームクヴィストは、女性器について科学的、哲学的な議論が果てしなく何世紀にもわたって展開されており、その結果として、女性の身体や健康についての「裏付けが乏しく、不正確で、時には有害となる結論」がもたらされたと述べている。

アリストテレスからサルトルに至るまで、男というものは女性のセクシュアリティに一家言を持っている。一方、当事者である女性の意見や経験は、あまり関心の対象にはなってこなかった。
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翻訳=上林香織 編集=石井節子

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