経済・社会

2021.04.17 11:00

ヴァギナはタブーか? 「エコフェミニズム」に自由と権利はあるか?

2021年1月初旬、ブラジルの芸術公園ウジナ・デ・アルテに出現した立体造形作品『Diva(歌姫)』


「外陰部」と「膣」は似て非なるもの


これを議論する前に、過去の経験を踏まえ、念のためにはっきりさせておきたいことがある。「外陰部」と「膣」は異なるものを意味しており、「膣」とは身体内の器官である。一方、「外陰部」とは外から見える部位全体を指す。
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「あなたの身体は戦場だ(Your body is a battlefield)」は、アーティストでありフェミニストでもあるバーバラ・クルーガーが、1989年に制作した伝説的なポスターのキャッチコピーだ。フェミニストの古典的スローガンとなったこのフレーズは、「女性から見た女性の置かれた立場」を完膚なきまでに表現している。女性は今日でもなお、自分の肉体に対する権利を自ら守らねばならない。すなわち自らの身体の自己管理権、身体表現の自由、不可侵権、安全に関する権利を獲得するための戦いを強いられているのだ。

私たちが暮らす社会は21世紀の今日でも、女性の身体に対してありえない美の基準を押し付けてくる。年齢や気分、機会や収入に関係なく、常に若々しく、痩せていて、洗練されており、性的魅力があること。

そしてもちろん、女性たちはその「主たる」機能を、老いと戦いながら果たすだろう。
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女性の身体は、どこまで行っても誰かに何らかの「借り」がある。根本的に性的な対象または機能が劣る道具だと常に見なされ、誰かがいつも当事者の女性に代わって、「その身体や人生をどう扱うのが最善なのか」を決めようとする。

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バーバラ・クルーガーが制作したポスター

「歯のある膣」、ヴァギナ・デンタタを掲げて行進


世界中のほとんどの女性は、いまだにさまざまな形態のジェンダーに基づく、性や生殖に関するものを含む暴力の対象である。中絶禁止に立ち向かい、女性器切除(ロシアでも行われる)、自らの意思に反した強制的な結婚など、妊娠出産に関する暴力の対象となっている。ポーランドやブラジルで近年行われt大がかりな抗議デモは、現在多くの国々で見られる「女性の苦闘」を示す好例だ。

女性の身体が今も昔も変わらず性的対象であり、他者の手に委ねられた道具とされる世界で、アーティスト、アクティビスト、人権擁護者たちはあえて外陰部のイメージを制作し、自らの身体を他人に依存せずに扱う権利を取り戻すことの象徴的意思表示として使っている。

「男性のまなざし」、性欲をかき立てる存在、性的モノ化といった文脈から離れて外陰部のイメージを用いることは、不従順や抗議の意を示す行動に当たり、女性の主観性の象徴になるのだ。

たとえば、巨大なヴァギナ・デンタタ(「歯のある膣」を指す言葉で、男性の性交に対する恐怖心を象徴するといわれる)を先頭に掲げてフェミニストが行進した2018年のロシアのサンクトペテルブルクのメーデーがある。アクティビストは、真紅の布を用いて白い歯をむき出しにした巨大な外陰部を作った。そして、サンクトペテルブルクの中心部を貫く長いメインストリートを練り歩く際、デモの先頭でこれを掲げると、何千人もの抗議者たちがそれに続いた。

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翻訳=上林香織 編集=石井節子

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