スターリンクが通信セクターにもたらす破壊的イノベーション

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スターリンクの進化はとても興味深い。第一に、スターリンクはスペースXのロケット打ち上げミッションを活用したサービスだ。スペースXは、人工衛星を地球周回軌道に投入する上でのコストと参入障壁を体系的に軽減することに成功した企業だ(スペースXでは、1回のロケット打ち上げで最大60基の衛星を周回軌道に送り込むことができる。さらには、他のミッションでロケットのペイロードに余裕がある場合には、そこにスターリンクの衛星を積み込むことも可能だ)。

同時に、スターリンクは独自の人工衛星技術を開発している。これまでよりはるかに低コストで、効率が良く、故障率が非常に低い技術だ。しかし何より、スターリンクが世界のどこでも簡単に使えるインフラの構築をめざしている点が興味深い。つまり、各市場で大規模な企業インフラを展開することなく、ウェブページ経由でのサービス提供形態を取っているのだ。衛星アンテナはユーザーによる設置が可能で、サービス提供に関してサポートのための人員を確保する必要はほとんどない。

通信サービスにおける最大の課題のひとつは、人口密度が低く、通信インフラの構築が経済的に難しい地方部に、どのようにしてインターネット接続サービスを提供するかという問題だ。こうしたエリアの多くに加えて、自然災害の被害に遭った人たちなどが、他社に引けを取らない帯域幅とレイテンシを手頃な価格で提供する、スターリンクのような衛星インターネット接続サービスを利用できるようになったら、果たして何が起きるだろうか?

さらに、こうしたサービスが、当初のターゲットである地方部だけでなく、既存の通信会社からあまり十分なサービスを受けられていない人たちからも、選択肢として検討されるようになったらどうなるだろうか?

これまで厳しい規制に縛られがちだった業界に、スターリンクが突き付けるテーマは他にも数多くある。ある市場に人工衛星技術を用いる企業が現れて、競争力のあるサービスを提供した場合、他社に再販されることが多い、事業者向けの周波数免許やインフラの減価償却にはどのような影響があるだろうか?

また、通信事業者のサービス内容について政府が監督権を維持し、これを利用して何らかの形の検閲を実行している国では、何が起きるだろうか? ロシアをはじめとする政府は、こうした衛星通信サービスを用いてインターネットに接続しようとする国民に対して、妨害措置を実施するだろうか?

米国以外の国でも、地方部をターゲットにしたスターリンクのお得な料金プランを目にするようになるのだろうか? つい最近まで、これはSFのように現実離れしたシナリオでしかなかった。だが現時点では、イーロン・マスクが発表したことにしては珍しく、期日通りに実行されそうな情勢だ。

マスクが華々しくぶち上げたディスラプションは、計画通りに現実のものになりつつある。2021年は、大幅にお得な通信サービスが誕生する年となるのだろうか?

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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