現実逃避できる場所をつくる。カニエ・ウェスト「コーチェラ」プロデューサーの仕事論

ノエル・ウェスナット・ウィットモア

音楽家の父を持ち、幼少のころからアース・ウインド&ファイアーのメンバーと親しくし、16歳でソングライターとしてデビューを果たしたノエル・ウェスナット・ウィットモア(Noelle Chestnut Whitmore)。

世界最高峰の野外フェスの一つであるコーチェラでカニエ・ウェストの「サンデー・サービス」の共同プロデューサーでもある活躍する彼女は、「音楽こそが言語の壁を超えて人とひとをつなげる力を有する」と考え、音楽スタートアップ「GeoJam」のCMOや、音声SNS「Clubhouse」上でのミュージカル、『ライオンキング』のエグゼクティブ・プロデューサーとして活躍するなどテクノロジーも活用しながら世界でその力を発揮している。

私とノエルと出会いはClubhouseだ。国内外のアーティストがClubhouseでジャムセッションをする企画を行っていた際に、ノエルは音声だけのコミュニケーションで上手に10名ほどのシンガーをナビゲートし、即興で演奏を完成させていった。その能力に感動し、彼女がプロデューサーとして大切にしているものはなにか? その技を少しでも参考にしたいと思い、このインタビューを行った。

私もプロデューサーを名乗る仕事を始めて10年ほど経つが、常に試行錯誤で悩んでいる。大きな舞台でも、または新興プラットフォーム上でも、しなやかに仕事を広げていく彼女にとって“プロフェッショナル”とは何なのか。5つの質問をぶつけてみた。

──カニエ・ウェスト、Jay-Z、ドレイクら著名なアーティストと仕事をしているあなたが考える「プロフェッショナル」の定義とは?

一言で表すと“リスペクト(尊重)”となります。私は15歳から音楽業界で働いていますが、この分野でプロフェッショナルとして活躍する方々には、音楽へのリスペクトの姿勢、音楽に謙虚でいつづけるということが共通しています。

もちろんビジネスとして成功させる手腕も必要になるのですが、自分が従事している業界に対して謙虚でいる、尊重する姿勢を持つことが米国で仕事をし続ける上では重要です。

例えば、ファレル・ウィリアムス。彼は音楽、ファッション、カルチャーにおける火付け役でありながら、それらの業界に対して常に謙虚な姿勢でいます。アーティストやデザインといった華やかな活動だけではなく、あまり表にでない慈善活動であったとしても、彼は誠意ある活動をされています。だからこそ大きなプロジェクトを成し遂げているとも言えます。

プロフェッショナルに仕事をするためには、その業界、関わる全ての人、コミュニティ全体を尊重する心を忘れないことが大事です。
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文=西村真里子

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