ウェス・ウンによれば「ミレニアム世代やZ世代の多くがリアルな世界での体験を求めており、我々はその体験を生み出したいと考えている。リアルな世界で人と出会い、商品に触れ、我々がどんなことを考えて、それを実践しているかを知ってもらいたい」という。
旗艦店の世界観は「SF」そして「サイバーワールド」
以前は期間限定の店しかなかったが、今は市の中心部にある「ランドマーク」の一画に常設店を構えている。「ランドマークは香港の人々にとってとても大切な存在だ。できてから40年たつが、今でも大勢の来店客で賑わっている。それに、テナント・マーケティング担当者たちが親身に支えてくれることは言うまでもない」とウェス・ウンは言う。
期間限定から常設へ。高級ショッピングモール、ランドマークにあるCASETiFYの新拠点
この旗艦店では、ニューヨークとモスクワを拠点にしているクロスビースタジオのデザイナー、ハリー・ヌレエフとタッグを組んで内装を刷新した。ハリウッド映画に登場する宇宙船をイメージし、SF作品やサイバーワールドを舞台にした物語の世界観をふんだんに取り入れて、デジタルと現実の世界を融和させた近代的な店舗を創り上げた。
SF作品に描かれるような未来をテーマにした近代的で新しいデザインの店がデジタルと現実の世界をひとつにする
クロスビースタジオのデザインチームは、CASETiFYのトレードマークともいえる色をモチーフとして店内をいくつかの区画に分け、それぞれがグラデーションを描いて次の区画につながるように設計した。居心地のいいコミュニティスペースを再現して、訪れた人にクリエイティブでカスタマイズされた体験を提供し、実用だけでなく、心にもバッテリーチャージできる場所を設けた。
店内には、なかに入って体験できるデジタルインスタレーション空間「CASETiFYキューブ」がさりげなく設置されている。「自分を表現しよう」というブランドミッションをイメージしたこのスペースは、360度どこを見てもデジタルインスタレーションが投影されていて、無限に広がるように見える。映画音楽のようなBGMが流れ、自撮りやインスタ映えの絶景スポットになっている。床には撮影に最適な場所を示す印があり、リピーターを増やすために映し出される映像も定期的に変える。
CASETiFYの武器はブランドとのコラボレーションだ。トム・ブラウンやヴェトモンといったファッションブランドだけでなく、収益の面でも大成功を収めたDHLとの提携など、特定の店舗や地域に限定したコラボレーションを展開している。
来店客は数えきれないほどの商品のなかから選んで、カスタマイズできる。店は社交と交流の場でもある
「コラボレーションは『活気』を絶やさないためにも重要だ」とウェス・ウンは言う。コラボレーションによる売上はファッション性を重視する消費者が多いアジアでもっとも大きく、アメリカではアイデンティティや創造性を表現できるアーティストとのコラボレーション商品の売上が依然としていちばん多い。